助成金ノウハウ情報

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)は女性が活躍できる環境づくりで最大60万円が支給される助成金

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)は、女性が活躍できる職場環境を整えようとする事業主を支援する助成金です。女性活躍加速化コースが設けられた背景から、助成金の支給額や支給の条件、支給の流れまで、助成金の申請に必要な情報をすべて紹介します。

目次

女性が活躍できる職場づくりが求められている

女性の就業率は上昇していますが、就業を希望していても働いていない女性が303万人も存在しています。これは、内閣府が2016年に行った調査で明らかになった数字です。そこで政府は、女性が職場で能力を発揮し活躍できる社会の実現に向け、様々な取り組みを行っています。そのひとつとして、女性活躍推進法が2016年4月に施行されました。

女性活躍推進法は、中小企業も義務の対象に

女性活躍推進法は、常時雇用する労働者が301人以上の事業主に対しては、次の4項目を義務付けています。

  • 自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
  • 状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定、社内周知、公表
  • 行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
  • 女性の活躍に関する情報の公表

また、常時雇用する労働者が300人以下の中小企業は努力義務で、女性が活躍できる職場づくりに取り組むことが求められています。ここでいう常時雇用の労働者とは、正社員だけでなくパート、契約社員、アルバイトなど、名称にかかわらず、次の要件に当てはまる労働者も含みます。

  • 期間の定めなく雇用されている者
  • 一定の期間を定めて雇用されている者であって、過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者。または雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者

2019年6月には、女性活躍推進法が改正され、2022年4月1日から、常時雇用の労働者が101人以上300人以下の労働者を雇用する事業主も義務化されます。

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)は、女性活躍推進法の対応で受給できる

改正女性活躍推進法によって、中小企業であっても対応に迫られることになります。厚生労働省では、そうした中小企業の取り組みを支援するために、助成金を設けています。それが、両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)です。

この助成金を受給するための取り組みは、まず女性活躍推進法に基づき、自社の女性の活躍に関する数値目標、数値目標の達成に向けた取り組みの内容などを盛り込んだ、行動計画を策定することです。次に、行動計画に沿った取り組みを実施。この取り組みの目標を達成した事業主と、さらに数値の目標を達成した事業主に対して助成金が支給されます。つまり、女性活躍推進法に対応した事業主は、両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)を受給できるというわけです。

なお、両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)は、昨年まで加速化Aコースと加速化Nコースの2コースありましたが、2020年度から統合され、1つのコースになりました。

支給額は47万5000円

この後紹介する支給対象となる目標を達成した企業には、47万5000円が支給されます。なお、助成を受けられるのは、1企業1回限りです。これまで両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)を受給した企業は対象となりません。ただし、要件を満たせば経過措置が適用になる場合があります。

生産性要件をクリアすることで、支給額は60万円に増える

生産性要件とは、生産性を高める取り組みを支援するために、生産性を向上させた会社へ支給する助成金の金額を割増する制度です。生産性要件が適用される条件は、次のいずれかになります。

  • 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における生産性が、その3年度前に比べて6%以上伸びていること
  • 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における生産性が、その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること

上記の条件をクリアすることで、60万円が支給されます。

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)を受給するために必要な4つの取り組み

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)を受給するためには、大きく4つの取り組みを行う必要があります。それは、次の4項目です。

  • 自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
  • 状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定、社内周知、公表
  • 長時間労働の是正等、働き方の改革に関する取り組みを行動計画に明記、実施
  • 女性の活躍に関する情報の公表

この4項目の内容を、詳しく説明します。

取り組み1.行動計画を策定する前に、女性の活躍に関する状況把握と課題分析を

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)ではまず、行動計画の策定にあたって、女性活躍推進法に定める項目について状況把握を行い、課題分析した上で、自社の課題に基づいた数値目標や数値目標の達成に向けた具体的な取組内容を取組目標としてまとめる必要があります。行動計画の策定するために、必ず把握すべき基礎項目は、次の3項目です。

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況

また、行動計画に盛り込むことが必要な項目は、次の5項目です。

  • 計画期間
  • 課題に基づいた数値目標
  • 数値目標達成のための取組目標
  • 取組の実施時期
  • 管理職に占める女性労働者の割合

1の計画期間は、2年以上5年以内で設定する必要があります。このほかにも、自社の実情に応じて、把握することが効果的である選択項目についても分析し、自社の女性の活躍に関する課題を洗い出し、取り組むべき目標を設定します。

取り組み2.支給条件となる数値目標と取組目標の設定

次に、両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)の支給条件となる数値目標と取組目標をまとめる必要があります。数値目標とは、状況把握・課題分析に基づき、雇用管理区分ごとに見た職務や役職において、男性と比べて女性の活躍に課題がある場合に、その課題を解決するために数値による目標設定をすることです。

ここでいう雇用管理区分とは、職種、資格、雇用形態、就業形態等の労働者の区分のことを指します。具体的には、事務職や技術職や専門職、正社員や契約社員やパートなどのように、職務内容や転勤や昇進などの人事異動の幅や頻度が異なる雇用管理を設定しているものをいいます。なお、取組前後の数値の比較により、達成状況を検証できないものは、数値目標にはできません。

もう1つの目標、取組目標とは、数値目標の達成に向けて行う取り組みのことです。なお、実施状況を客観的な資料で検証できないものは、取組目標にはできません。また、設定した数値目標と関連性がない取組目標は、支給対象になりません。

どちらの目標も、行動計画に記載されていることが必要です。そもそも記載されていない取り組みを行ったり、数値目標を達成しても支給対象になりません。支給対象になる目標の例として、次の例を参考にしてください。

例1.女性の積極採用に関する目標

数値目標の算定対象となる項目は、採用における女性の状況です。原則として事業年度(12カ月)における採用状況で目標の達成状況を判断します。支給対象となる目標は次のいずれかに該当するものに限ります。

  • 直近3事業年度の平均した「採用における女性の競争倍率」×0.8が、直近3事業年度の平均した採用における男性の競争倍率よりも高い場合において、採用における女性の競争倍率(応募者数/採用者数)を引き下げる目標
  • 採用した女性労働者の実数または採用した労働者に占める女性労働者割合を引き上げる目標

また、支給対象となる取組目標は以下の11項目です。

  • 大学の工業系学部・専門学校等と連携した女子学生向けセミナーの実施
  • 女子学生向けパンフレット等の作成(改定を含む)及び配布
  • 女子学生を対象とするインターンシップ、職場見学会の実施
  • ホームページ等で、社内で活躍する女性や女性に対する支援制度等の紹介
  • 女性向けセミナーの実施
  • 女性向けパンフレット等の作成(改定を含む。)及び地域イベント等での配布
  • 女性を対象とする職場見学会の実施
  • ホームページ等で、社内で活躍する女性や女性に対する支援制度の紹介
  • スポット的に採用選考に関わることになる労働者向けの性別にとらわれない公正な採用選考を行うためのガイドラインなどマニュアルの作成や研修制度の導入及び実施
  • 女性が使いやすい設備・機器等の導入(軽量で使いやすい器具、女性の体力・体格等に配慮した安全具、運転しやすい機材等)
  • 新たに女性を配置しようとする現場へのハード面での環境整備(更衣室、トイレ、シャワー室、休憩室・仮眠室等の改修等)

例2.多様なキャリアコースに関する目標

数値目標の算定対象となる項目は、女性労働者のコース転換制度の利用状況です。また、支給対象となる取組目標は、以下の2項目です。

  • 一般職から総合職へのコース転換制度や試験制度の構築と実施
  • 総合職へのコース転換をめざす一般職社員、準総合職社員を対象とした研修制度の導入、実施

例3.女性の配置・育成・教育訓練に関する目標

数値目標の算定対象となる項目は、取り組み前後の女性比率や人数です。支給対象となる取組目標は以下の10項目です。

  • 研修の実施(業務に必要な知識・技術を付与するための研修の実施、必要な資格を取得するための研修の受講・受験費用負担等)
  • 女性社員が受講する通信教育、Eラーニングの費用負担
  • 資料の作成・配付、メールマガジンの発行、女性交流会の実施による情報提供
  • 労働条件の見直しなど就業規則の改正
  • 女性が使いやすい設備・機器等の導入(軽量で使いやすい器具、女性の体力・体格等に配慮した安全具、運転しやすい機材等)
  • 新たに女性を配置しようとする現場へのハード面での環境整備(更衣室、トイレ、シャワー室、休憩室・仮眠室等の改修等)
  • 女性の配置のない又は少ない職種等に新たに配置した女性を支援するためのメンター制度、チーム支援や定期面談等の制度の構築と実施
  • 係長級・主任級の女性を増加させるためのヒアリング・個別支援・グループ支援等の制度の構築と実施
  • 管理職登用準備研修の受講者選定基準の明確化や、受講者推薦担当者(管理職)への説明の実施
  • 管理職又は女性を初めて配置する上司に対する研修を実施

例4.女性の積極登用・評価・昇進に関する目標

数値目標の算定対象となる項目は、取り組み前後の管理職の女性比率や人数です。支給対象となる取組目標は以下の7項目です。

  • 管理職をめざす女性社員を対象とした、キャリア形成や動機付けのためのセミナーの実施(自社や他社の女性役員や女性管理職等を講師として、めざすべきロールモデルをイメージできる取組等)
  • 管理職・資格を必要とする専門職(社内資格を含む。)をめざす女性社員を対象としたキャリアカウンセリングの実施
  • 管理職登用直前の女性を対象として、管理職に必要な知識・技術を付与する研修の実施(部下の指導、メンタルヘルス管理等を含む)
  • 女性社員が受講する通信教育、E・ラーニングの費用負担
  • 女性の管理職登用をしやすくする人事制度の導入や、社内規則等の改定(産休・育休取得経験が不利にならない評価制度や昇進・昇格基準の制定、部下がれる人事評価制度の構築と実施等)
  • 新たに管理職に登用した(又は登用しようとする)女性を支援するためのメンター制度、チーム支援制度や定期面談等の構築と実施
  • 社内外の女性役員や女性管理職と定期的にコミュニケーションをとり、仕事上の悩み等を話し合う交流会等を開催する

取り組み3.長時間労働を是正する取り組みも求められる

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)の支給を受けるためには、数値目標の達成に向けた取組目標とは別に、ノー残業デーの呼びかけや年次有給休暇の取得促進など、長時間労働の是正等、働き方の改革に関する取り組みを行動計画に明記し、実施する必要があります。

取り組み4.行動計画、女性の活躍の状況に関する情報を公表する

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)の受給条件をクリアするためには、女性活躍推進法に基づく行動計画や、女性の活躍に関する情報の公表を行うだけでなく、数値目標の達成状況を公表する必要があります。また、公表する際には、女性の活躍推進企業データベースに掲載する必要があります。行動計画を策定した時点で公表すべき内容は、次の7項目です。

  • 策定した行動計画
  • 女性の活躍に関する情報(省令に定める14項目のうち、任意の1項目以上)
    例:採用者に占める女性割合
  • 男女別の採用における競争倍率
  • 労働者に占める女性割合
  • 勤続年数の男女差
  • 労働者の一月当たりの平均残業時間
  • 管理職に占める女性比率等

また、数値目標を達成した時点で公表すべき内容は、次の2項目です。

  • 数値目標の達成状況
  • 女性の活躍に関する情報の更新

こうした情報を公表する、女性の活躍推進企業データベースとは、自社の女性の活躍推進に向けた取り組みを掲載し、紹介するサイトです。このサイトでは、他社の取り組みを検索し、業界内・地域内での自社の位置付けを知ることもできます。

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)の申請手順と注意する期限とは

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)は、取り組みを始める前にやるべきことのほか、提出する届出や支給申請の締め切りなど、期限に注意しなければならないことがあります。

受給するまでの7つのステップ

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)の申請手順は、次の7つのステップです。

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)

支給申請までに、行動計画の策定に関する届出が必要

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)では、行動計画を策定したら、本社所在地を管轄する都道府県労働局に、行動計画を策定した旨の届出をする必要があります。届出の締め切りは、支給申請までですが、なるべく早めに届出をしておきましょう。

支給申請は、取組目標を達成した日の翌日から2カ月以内に

取組目標を達成した場合、支給申請することができます。支給申請の締め切りは、取組目標を達成した日の翌日から2カ月以内です。

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)の支給申請に必要な書類は11種類

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)の支給申請に必要な書類は次の11種類です。

  • 行動計画の写し(次期の行動計画を策定したため、女性の活躍推進企業データベースに掲載されている行動計画と申請に係る行動計画が異なる場合に限る)
  • 行動計画策定時の雇用管理区分ごとに見た職務又は役職における男女の労働者数がわかる書類
  • 申請事由となった数値目標及び取組目標に関連する自社の女性労働者の活躍に課題があることがわかる書類
  • 行動計画の労働者への周知をしていることがわかる書類
  • 雇用契約書、労働条件通知書に加え、短時間正社員が目標達成に係る対象者の場合には、短時間正社員の制度について規定した就業規則など
  • 取組目標を達成したこと及びその期日を明らかにする書類
  • 数値目標を達成したこととその期日を明らかにする書類(取組前、取組後及び支給申請日におけるそれぞれの数値がわかるもの)(別表「支給対象となる数値目標及び取組目標」の「目標を達成したことを検証できる資料の例」参照)
  • 管理職に占める女性労働者の割合の引上げを数値目標とする場合は、対象労働者に係る賃金台帳(管理職登用前6カ月分(登用日の前日から6カ月前の日までの賃金に係る分)及び管理職登用後6カ月分(登用日から6カ月経過する日までの賃金に係る分))
  • 数値目標が「管理職に占める女性労働者の割合の引上げ」に関するものである場合は「【加】別様式の1」を、「女性が少ない職種等における女性の人数または比率の引上げ」に関するものである場合は「【加】別様式の2」をあわせて提出するものとする
  • 生産性要件を満たした場合の額の適用を受けようとする中小企業事業主は、生産性要件算定シートと算定の根拠となる証拠書類(損益計算書、総勘
    定元帳など)
  • その他都道府県労働局長が必要と認める書類

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)を申請する上で知っておきたい2つのポイント

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)を申請する上で、押さえておきたい2つのポイントを紹介します。

非正規雇用の労働者を正規雇用に転換しても、支給が受けられる

女性が男性と比較して、相当程度少ない職種や職務に新たに配置して目標を達成すれば、非正規雇用の助成を正規雇用に転換しても、支給申請をすることができます。

目標が「女性を採用した」「女性を管理職につけた」では支給を受けられない

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)は、女性活躍推進法に基づく事業主の取り組みを支援するために支給されるものです。女性活躍推進法では、事業主は自社の女性の活躍の状況を把握し、自社の女性が男性に比べて活躍が遅れてい課題を分析し、その結果を数値目標などに盛りこんで、行動計画を策定する必要があります。

そのため、単に「女性を採用した」「女性を管理職につけた」というだけでは、この助成金の支給は受けられません。また、「これまでなかった職種を新たに設けて、女性を採用する」という場合は、その職種にはもともと男性も女性もいなかったため、「男性に比べて女性の活躍が遅れていた」という状況ではないので、女性活躍推進法上の目標とならず、支給対象とはなりません。

まとめ

女性活躍加速化コースの活用に取り組むことで、助成金が支給されるだけでなく、支給が中小企業も義務の対象になっている女性活躍推進法の対応にもなる、一石二鳥の助成金といえます。両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)の活用をぜひ検討してはいかがでしょうか。

助成金を受給するためには、申請書類の作成が欠かせません。書類を効率よく作成するために、記入のポイントをガイダンスでわかりやすく解説し、スムーズな作成をサポートする助成金クラウドの活用してはいかがでしょうか。

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