働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)は、事業主団体が、団体に参加する事業主の労働条件の改善のために、時間外労働の削減や賃金引上げに向けた取り組みを実施した場合に助成金が支給されます。支給額や支給対象の取り組み、申請方法や事例を詳しく紹介します。
目次
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)は事業主の団体に支給される助成金
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)は、事業主や事業所ごとに助成される助成金とは異なり、事業主団体に助成される助成金です。ここでいう事業主団体は、3事業主以上で構成される団体で、事業主団体と共同事業主の2種類に分けられます。
事業主団体等は、事業主団体と共同事業主の2種類がある
事業主団体は、さらに次の法律に規定する団体か、それ以外の団体に分けられます。
- 法律に規定する団体は次の団体です。
事業協同組合、事業協同小組合、信用協同組合、協同組合連合会、企業組合、協業組合、商工組合、商工組合連合会、都道府県中小企業団体中央会、全国中小企業団体中央会、商店街振興組合、商店街振興組合連合会、商工会議所、日本商工会議所、商工会、都道府県商工会連合会、全国商工会連合会、一般社団法人及び一般財団法人 - 上記以外の法人格を有する事業主団体であって、次のaからdの要件を満たす団体
- 団体の目的、組織、運営及び事業内容を明らかにする規約、規則等を有する
- 法人格を有する代表者が置かれているほか、事務局の組織が整備されている
- 過去の事業活動状況、財政能力からみて、構成事業主における労働時間等の設定の改善に向けた気運の醸成、啓発等の事業を効果的かつ適正に実施できる
- 定款、会則等において、構成事業主への指導等の規定を有している
一方、共同事業主は、共同する全ての事業主の合意に基づく協定書を締結している団体です。協定書には、次の6項目を盛り込む必要があります。
- 代表事業主名(法人格を有すること)
- 共同事業主名
- 改善事業に要する全ての経費の負担に関する事項
- 有効期間
- 協定年月日
- 共同事業主を構成する全ての事業主の記名押印
事業主団体が他の事業主団体と共同で助成金に取り組む場合には、この協定書を締結する必要があります。
支給対象となる事業主団体の条件は6項目
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の支給が受けられる事業主団体や共同事業主の条件は、次の6項目をクリアしていることです。
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること
- 中小企業事業主の占める割合が、構成事業主(共同事業主については、代表事業主を除く事業主)全体の2分の1を超えていること
- 事業主団体等の事業活動状況に問題がないこと
- 事業主団体等の財政が健全であること
- 過去に補助金等の不正使用等事案がないこと
- その他、事業実施上の問題がないこと
中小企業とは、次の表にある要件を満たしている事業主のことです。
産業分類 | 資本金の額・出資の総額 | 常時雇用する労働者の数 |
小売業(飲食店を含む) | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の支給対象となる取り組みは10種類
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)で支給対象となる取り組みは次の10種類です。このうち1つ以上の実施が必要となります。
- 市場調査の事業
- 新ビジネスモデル開発、実験の事業
- 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)の事業
- 下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整の事業
- 販路の拡大等の実現を図るための展示会開催及び出展の事業
- 好事例の収集、普及啓発の事業
- セミナーの開催等の事業
- 巡回指導、相談窓口の設置等の事業
- 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
- 人材確保に向けた取組の事業
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の成果目標は、取り組みの共有
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の支給対象となる取り組みは、成果目標の達成を目指して実施する必要があります。成果目標は、支給対象となる取り組みの内容について、事業主団体が事業実施計画で定める時間外労働の削減や賃金引上げに向けた改善事業の取り組みを行い、構成事業主の2分の1以上に対して、その取り組みか取り組み結果を活用することと定められています。この成果目標を達成できなかった場合は、助成金は支給されません。
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の支給額は、3項目の条件で決まる
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の支給額は、以下の3種類のうちのいずれか低い方の額となります。
-
- 上限額
上限額は500万円です。ただし、都道府県単位または複数の都道府県単位で構成する事業主団体の場合、上限額は1000万円となります。都道府県単位または複数の都道府県単位で構成する事業主団体とは以下の4項目に当てはまる団体を指します。- 事業主団体等であること。共同事業主は含みません。
- 構成事業主が10以上であること
- 構成事業主の所在地が都道府県内の複数の市区町村又は複数の都道府県であること
- 定款、会則等において、都道府県内の複数の市区町村又は複数の都道府県の事業主を構成事業主とすることが明らかであること(複数の事業主団体が協定書の締結により事業を共同で行う場合を含む。)
- 総事業費から収入額を控除した額
- 上限額
試作品のテスト販売、セミナーの受講料の徴収など、改善事業を行うことで、収入が発生する場合(見込み含む)は、当該額を算出します。
- 対象経費の合計額
改善事業の取り組みごとの合計額を算出します。なお、改善事業ごとに上限額が定められています。
対象となる経費は、次の14項目です。- 謝金
- 旅費
- 借損料
- 会議費
- 雑役務費
- 広告宣伝費
- 印刷製本費
- 備品費
- 展示会等出展費
- 通信運搬費
- 機械装置等購入費
- 委託費
- 原材料費
- 試作・実験費
ただし、mの原材料費とnの試作・実験費については、試作・開発を目的とするものに限ります。
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の申請手順と注意する期限とは
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)は、取り組みを始める前にやるべきことのほか、提出する届出や支給申請の締め切りなど、期限に注意しなければならないことがあります。
受給するまでの4つのステップ
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の受給までのステップは、次の4つのステップです。
交付申請書の提出の締め切りは2020年11月30日(月)
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)は、取り組みを実施する前に、交付申請書と事業実施計画書などの必要書類を提出する必要があります。書類を提出した後、交付が決定してから取り組みを実施しなければ、助成金が支給されないので、注意しましょう。
交付申請の締め切りは2019年11月29日(金)なので、助成金の活用を考えている方は、急いで申請の準備に取り掛かりましょう。また、来年度の申請を検討している方は、すぐに申請の準備にかかれるように、定期的に情報を収集しておきましょう。
支給申請の締め切りは2021年3月1日(月)
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の支給申請の締め切りは、2021年3月1日(月)までと決まっています。締め切りに間に合うように、前倒しで申請しましょう。
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の交付申請に必要な書類とは
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の申請に必要な書類と、その中でも重要な事業実施計画について解説します。
交付申請に必要な書類は6種類
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の交付申請には、次の6種類の書類が必要です。
- 交付申請書
- 事業実施計画
- 構成事業主名簿、協定書
- 定款、会則など
- 直近2年間の収支決算書(新規設立時は除く)
- 見積書(事業を実施するために必要な経費の算出根拠が分かる資料、必要に応じて導入する機器などの内容が分かる資料)
申請書類の中でも重要な、事業実施計画には支給対象事業と成果目標を記載
交付申請に必要な書類の中で、重要なのは事業実施計画です。この計画に沿って、取り組みを実施しなければなりません。この計画には、支給対象になる10種類の事業のうち、どれか1つ以上について成果目標にむけて実施することを詳細に記入します。特に、計画の実行期間は、交付決定の審査に時間がかかることを考慮し、前倒しで作成するようにしましょう。
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の支給申請に必要な書類は6種類
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の支給申請には、次の6種類の書類が必要です。書類によっては、右上に「資料1」「資料A」など記載する必要がありますので、注意して作成しましょう。
- 支給申請書
- 国や地方公共団体からの他の補助金を受けている場合、他の補助金の助成内容が分かる資料(他の補助金の申請書及び交付決定通知書など。該当する場合のみ)
- 事業実施結果報告
- 成果目標の取組状況に関する証拠書類(会報誌、メルマガ、HPの写し、好事例報告書など)
- 改善事業実施の効果検証、活用方法の検証、事業を実施したことが客観的に分かる資料
- 事業の実施に要した費用を支出したことが確認できる書類(銀行振込受領書、領収書、請求書、日報、雇用契約書など)
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の具体的な取り組み事例とは
すでに助成金の活用に取り組んでいる事業者の方でも、事業主団体などの取り組みとなると、イメージしんくいかもしれません。例えば、厚生労働省が紹介している事例の中には、次のような取り組みがあります。
- 団体で協力して「労働環境改善マニュアル」を作成する経費や講習会実施の助成をうけ、生産性や賃金が上昇した
- 会員企業などの求人募集を団体がとりまとめて業界合同説明会などを実施する経費の助成を受け、採用が効率化した
- 廃棄していた副産物の有効利用法をアピールする小冊子や販促ツールを作る助成を受け、副産物の廃棄を減らして販売することができ、売り上げに貢献した
こうした事例を参考にして、活用を検討してください。
まとめ
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)の活用に取り組むことで、助成金が支給されるだけでなく、好事例の共有や、合同での採用活動、業界全体の活性化など、事業主が団体として活動するメリットが得られます。助成金の交付申請の締め切りまで、残された時間はわずかです。
助成金の活用を検討している方は、すぐに申請の準備に取り掛かりましょう。書類作成には、手間なくスムーズに書類が作成できる、助成金クラウドをぜひ活用してみてください。
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