助成金ノウハウ情報

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金はキャリアアップ助成金(正社員化コース)の上乗せ獲得が可能

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、アルバイトやパートなど、有期雇用の労働者を、無期雇用や正規雇用に転換した事業主に支給される助成金です。キャリアアップ助成金(正社員化コース)とセットで受給できる、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の受給条件や申請手順を解説します。

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の支給額は最大60万円

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、東京労働局の管内に事業所を置く中小企業が受給できる助成金です。

支給額は、対象の労働者1人当たり20万円

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、厚生労働省が管轄するキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給申請を行い、支給決定を受けた事業主に支給されます。支給額は、有期雇用の労働者を無期雇用に転換するか、正規雇用に転換し、キャリアアップ助成金(正社員コース)の支給対象となった労働者1人につき、20万円です。

支給の限度額は、1事業所当たり60万円

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の申請の限度は、1年度につき1事業所3回までです。そのため、支給額の上限は1年度につき、1事業所60万円となっています。キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定を受けた対象労働者が4人以上いたとしても、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の申請は3人以内に収める必要があります。

また、申請を撤回する場合には、撤回届を提出が必要です。撤回届の提出期限を過ぎた場合、対象労働者の変更や追加はできません。また、撤回届提出期限の翌日以降に事業計画を中止した場合は、年度内の申請回数にカウントされ、交付金額も使用されたものとみなされます。

支給額
対象労働者 助成額
1人 200,000円
2人 400,000円
3人以上 600,000円

 

退職金制度の整備で、支給額が10万円増える

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、支給対象になる労働者の能力向上・人材育成を図るため、対象労働者に対し、支援期間中に1回以上研修を実施します。その支援期間の3カ月中に、新たに退職金制度を整備・導入し、改正後の就業規則や労働協約を労働基準監督署に提出、実施した場合、退職金制度整備として、さらに10万円が支給されます。

退職金制度が無く、新たに独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する中小企業退職金共済制度に事業主として加入した場合も同様に10万円が支給されます。

なお、支援期間開始前に、すでに退職金制度が労就業規則や労働協約に規定されている場合、または中退共制度に加入している場合は申請できません。

支給の対象になる労働者、事業主それぞれの条件とは

支給対象になる条件は、労働者は3項目、事業主は10項目あります。事業主は特に注意して確認しましょう。

支給対象となる労働者の条件は3項目

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の支給対象になる労働者の条件は、次の3項目すべてを満たしていることです。

  • キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定を受けた労働者であること。
  • 2017年4月1日以降に都内事務所において転換または直接雇用された労働者であること(東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の交付決定および、東京都正規雇用等転換促進助成金の支給決定を受けている同一の対象労働者は対象とはなりません)。
  • 転換された日から支援期間(3カ月間)終了日まで、同一の事業主との間で転換または直接雇用後の雇用区分の状態が継続し、都内の事務所に在籍している労働者で、かつ、有期雇用の労働者ではないこと。

支給対象となる事業主の条件は10項目

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の支給対象になる事業主の条件は、次の10項目すべてを満たしていることです。

  • 東京労働局管内に雇用保険適用事業所(以下、事業所)があること
  • 2017年4月1日以降に対象労働者を転換し、東京労働局長に対象労働者にかかる正社員化コースについて支給申請を行い、東京労働局長が支給決定をしていること
  • 交付申請日時点で、キャリアアップ助成金(正社員化コース)で転換した対象労働者が在職し、支援可能な状況であること
  • 東京都政策連携団体の指導監督等に関する要綱に規定する東京都政策連携団体、事業協力団体または東京都が設立した法人でないこと
  • 法人都民税及び法人事業税(個人事業主の場合は、個人都民税および個人事業税)の未納がないこと。なお、未納とは、納税義務があるにもかかわらず納付していないことをいいます
  • 申請日の前日から起算して過去5年間に重大な法令違反等がないこと。違法行為により罰則を受けた場合、労働基準監督署により送検された場合など法令違反があった事業主は申請できません
  • 労働関係法令について次のaからfを満たしていること
    • 従業員に支払われる賃金が、就労する地域の最低賃金額(地域別、特定(産業別)最低賃金額)を上回っていること
    • 固定残業制度(残業時間の有無にかかわらず、一定時間分の残業代を支払う制度)を取り入れている場合は、固定残業代等の時間当たり金額が時間外労働の割増賃金に違反していないこと。また固定残業時間を超えて残業を行った場合は、その超過分について通常の時間外労働と同様に、割増賃金が追加で支給されていること
    • 法定労働時間を超えて労働者を勤務させる場合は、「時間外・休日労働に関する協定(36協定)」を締結し、全労働者に対し、協定で定める上限時間(特別条項を付帯した場合はその上限時間)を超える時間外労働をさせていないこと
    • みなし労働時間制(事業場外労働のみなし労働時間制、裁量労働制)において、労使協定または労使の合意で定めた時間が法定労働時間を超える場合、その時間が月80時間以下であること
    • 申請日を起点として過去6カ月の時間外労働の平均が月80時間を超える労働者がいないこと
    • その他賃金や労働時間等に関する労働関係法令を遵守していること
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の第2条第1項に規定する風俗営業、同条第5項に規定する性風俗関連特殊営業、同条第11項に規定する特定遊興飲食店営業、同条第13項に規定する接客業務受託営業及びこれらに類する事業を行っていないこと
  • 暴力団員等(東京都暴力団排除条例の第2条第3号に規定する暴力団員及び同条第4号に規定する暴力団関係者をいう)、暴力団(同条第2号に規定する暴力団をいう。)及び法人その他の団体の代表者、役員または使用人その他の従業員若しくは構成員が暴力団員等に該当する者でないこと
  • 上記1~9のすべてを満たした場合でも、知事が適正と認めない場合は、交付対象とならないことがあります

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金を受給するまでの5つのステップ

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の申請から支給されるまでのステップは5つです。尚、平成32年度分の受付は10月30日(金)までとなっています。原則先着順となっており予定社数の制限があるので早めの申請が良いでしょう。

東京都正規雇用など転勤安定化支援助成金の流れ

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金に取り組む前に提出が必要な書類は全部で9つ

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金を受給するための取り組みを始める前に、事前に提出しなければならない書類があります。それは、次に紹介する9つの書類です。

  • 事業実施計画書兼交付申請書
  • キャリアアップ助成金(正社員化コース)支給申請書の写し
  • 上記2に係るキャリアアップ助成金(正社員化コース)支給決定通知書の写し
  • 誓約書
  • 印鑑証明書
  • 納税証明書
    • 法人の場合、法人都民税、法人事業税
    • 個人の場合、個人都民税、個人事業税
  • 会社概要がわかるもの
    • 法人の場合、商業・法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
    • 個人の場合、個人事業の開業・廃業等届出書の写し
  • 支払金口座振替依頼書
  • 振込口座の通帳またはキャッシュカード等口座名義人(カタカナ)が記載されているものの写し退職金制度整備の加算申請をする場合は、下記の書類が追加で必要になります。
  • 申請時点で最新の就業規則全文

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の受給要件をクリアするための3つの取り組み

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)と同じように、労働者のキャリアアップのための取り組みが求められます。

指導育成計画の策定

指導育成計画書は、職場ごとに、労働者に合わせた人材育成を行うために策定するキャリアプランをまとめる書類です。キャリアプランを策定するときには、必ず所属長が対象となる労働者と面談を行い、対象労働者の了解を得たうえで作成します。

所属長は、対象労働者との面談や業務上のやり取りを通じて、今後のキャリアプランや業務に必要な資格、勤務にあたって配慮することなどを把握し、3年後の到達目標や、年度ごとの目標及び具体的育成内容、研修計画、OJTによる指導について定めます。

対象労働者の経験や能力、資格、これまで担当してきた業務や現在担当している業務内容、希望する働き方やキャリア形成を考慮し作成することで、対象労働者本人も目標が明確化し、モチベーションを保てるようにすることがポイントです。

指導育成計画書は、支給対象となる労働者ごとに策定し、支援期間開始日から1カ月以内に作成する必要があります。

メンターの選任・指導

メンターとは、職場において、支給対象となる労働者の指導・育成を担う、上司や先輩社員などのことを指します。正社員として業務を適切に遂行し、継続して働き続けられるように業務をサポートする重要な存在です。このため、対象労働者と同一事務所に所属し、同じ係やグループまたは同じフロアに在籍するなど、常にOJTによるアドバイスができる方を選任します。メンターによる指導は、支援期間中、3回以上(3日以上)実施する必要があります。

メンターは、支援期間開始日より1カ月以内に選任する必要があります。対象労働者1名に対し、1名のメンターを選任します。また、1人のメンターが複数名の対象労働者のメンターとなることは可能ですが、1人の対象労働者に複数名のメンターを選任することはできません。

なお、支援期間中に、対象労働者の所属の事業所の変更があった場合、新たにメンターを選任することは可能です。

研修の実施

支給対象となる労働者の能力向上・人材育成を図るため、対象労働者に対し、支援期間中に1回以上研修を実施する必要があります。研修は、指導育成計画書における年度ごとの取組目標にあわせた資格取得、能力・知識の習得に向けた内容のものとし、2時間以上実施する必要があります。対象となる研修は、外部研修と社内研修の2つあります。

  • 外部研修
    業務に必要な資格取得の講座、能力習得のセミナーなどが対象となります。また、長期間にわたる研修でも、支援期間内に受講日が入っていれば対象となります。
  • 社内研修
    資格取得、技術・技能習得を目的とした社内での講習会や勉強会等を企画して実施する場合、または社内での研修に参加させる場合はいずれも対象となります。ただし、あくまでも指導育成計画書に基づく知識・技術習得の研修に限ります。マネージャー会議など通常の業務に付随するものやOJTと同様のもの、基本的なマナー研修などは対象となりません。また、Eラーニングによる研修については、一方的に視聴するだけでなく、講師との質疑応答が可能な環境がないと対象になりません。。

なお、研修にかかる経費は、申請事業主が負担します。研修を勤務時間外に実施する場合は、時間外勤務手当も支給する必要があります

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の支給申請で必要になる主な書類は3つ

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の支給申請をする際には、取り組みを行った内容を報告する書類を提出します。主な提出書類は次の3つです。

指導育成計画書の作成

指導育成計画書は、労働者のキャリアプランを明確にするために作成する書類です。指導育成計画書を作成するポイントは、以下の6つです。

  • 対象労働者1人につき、1枚作成すること
  • 所属長が対象労働者と面談を行い、対象労働者の了解を得たうえで支援期間開始日から1カ月以内に作成すること
  • 3年後の到達目標は、対象労働者の状況や今後期待することなども含め、キャリアプランを踏まえて記載すること
  • 各年の目標は、数値目標を入れる等、具体的に記載すること
  • 所属長及び対象労働者は、署名欄に自署すること
  • 署名日は面談実施日を記入しないこと

メンター選任・指導報告書

メンター選任・指導報告書は、メンターによる指導内容などを具体的に記載する書類です。メンター選任・指導報告書を作成するポイントは以下の6つです。

  • 対象労働者1人につき1枚作成すること(メンターの変更があった場合は、メンターごとに作成すること)
  • 指導結果については、メンターが記載することを原則とすること
  • 指導は対象者の出勤日に合わせて実施すること(支援期間中3回以上の実施)
  • 指導内容は、指導の目標、指導内容、目標達成の結果など、具体的に記載すること。対象労働者はメンター選任・指導報告書の内容を確認後、様式下部の署名欄に自署すること
  • 署名日は最終指導日以降で支援期間中の日付にすること

研修実施報告書

研修実施報告書は、実施した研修の内容を共有するための書類です。研修実施報告書を作成するポイントは以下の6つです。

  • 研修実施報告書は、対象労働者1人につき1枚作成すること(同じ研修を複数名が受講した場合でも1枚にしないこと)
  • 研修受講(実施)目的は、指導育成計画書の取組目標に合わせて記載すること。なお、「○○資格の取得」「マネジメント能力の向上」など具体的に記載すること
  • 研修計画には、研修名、研修内容、実施期間を記載し、社内研修の場合は講師役職・氏名、外部研修の場合は実施機関名を記載すること
  • 研修の内容がわかるものとして、研修通知書、パンフレット、テキストの抜粋のいずれかを添付すること
  • 対象労働者は研修実施報告書の内容を確認後、様式下部の署名欄に自署すること
  • 署名日は研修日以降で支援期間中の日付にすること

このほかにも、支給申請で必要な書類とは

支給申請の際は、このほかにも助成金の支給金額を申請する実績報告書や、研修内容がわかる研修通知書、パンフレット、テキストいずれか1つの抜粋か写し、支援期間開始日を含む月から支援期間終了日を含む月までの出勤簿またはタイムカードの写し(対象者全員分)も提出します。

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の申請受付の事業所数は500事業所まで

受け付ける申請数は上限があり、500事業所を超えると申請の受付は終了します。なお、申請は先着順なので、申請を検討している方は、少しでも早く準備を進めましょう。

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の交付申請の受付期間は2020年10月30日まで

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、交付申請の受付期限や支援期間、実績報告の受付期限があります。気がついたら期限が過ぎていて、申請できなかったといった事態を避けるためにも、早めの行動を心がけてください。

交付申請の受付期間
申請受付期間 支援期間 実績報告受付期間
第1回 5月11日~5月29日 7月1日〜9月30日 10月1日~10月26日
第2回 6月10日~6月30日 8月1日〜10月31日 11月1日~11月25日
第3回 7月10日~7月31日 9月1日〜11月30日 12月2日~12月25日
第4回 8月7日~8月31日 10月1日〜12月31日 1月6日~1月25日
第5回 9月10日~9月30日 11月1日〜1月31日 2月3日~2月25日
第6回 10月9日~10月30日 12月1日〜2月29日 3月2日~3月25日

 

まとめ

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)とセットで支給が受けられる助成金です。支給のハードルも低い助成金なので、東京労働局の管内に事業所を置く中小企業の事業主はぜひ活用しましょう。申請書類の準備に時間がかけられないという方は、申請書類を手間なく、スムーズに作成できる助成金クラウドをご活用ください。

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