助成金と勤怠管理は、切っても切り離せない関係にあります。なぜなら、助成金を受給する条件と、密接にかかわっているからです。助成金を受給するめに勤怠管理が必要な理由とともに、受給条件をクリアするために重要なポイントも併せて紹介します。
目次
勤怠管理は事業者にとって重要な義務のひとつ
勤怠管理とは、事業者が労働者の就業状況を正確に把握し、法令や就業規則に則った働き方ができているかを管理することです。労働基準法第108条では、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった項目を、記録・管理することを義務付けています。
勤怠管理ができていないと罰則が
それでは、この義務を守れなかった事業者はどうなるのでしょうか。労働基準法第120条によると、労働日数などを記録・管理していない場合は、30万円以下の罰金となることがあります。また、労働基準法第109条では、事業者に勤怠を記録した書類を3年間保存するよう、義務づけています。
もし、労働基準監督署が調査に入ったとき、書類を提出できなかった場合は、30万円以下の罰金となることがあります。起業して間もない事業者であっても、労働者を雇用していれば対象になるので、注意しましょう。
勤怠管理は労働者を守るため
勤怠管理が義務付けられているのは、労働者を守るためです。厚生労働省は、労働時間を削減するため、頻繁に労働基準法を改正しています。2019年4月に新たに施行された労働基準法でも、働き方改革を掲げて、次の3つを目標に挙げています。
- 長時間労働の是正
- 多用で柔軟な働き方の実現
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
勤怠管理で認められている3つの方法
勤怠管理の方法は、1つではありません。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」では、勤怠管理の方法として、事業者自らが確認する方法、機器を使って客観的に記録する方法、従業員の自己申告制による方法を認めています。
このうち、機器を使って客観的に記録する方法とは、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録などを使った勤怠管理です。
助成金を申請するには勤怠管理の記録が必要
この、勤怠管理に使用したタイムカードやICカードなどの記録、いわゆる出勤簿が、厚生労働省が支給する助成金の申請に重要な役割を果たします。助成金を申請する際には、出勤簿の提出が条件に含まれているからです。
先ほども触れましたが、厚生労働省は労働時間の削減を目標に掲げています。そのため、助成金の審査では、事業者が勤怠管理を適正に行っているか、労働基準法に違反した長時間労働を労働者に強いていないか、チェックしているのです。
助成金の申請で、チェックされる出勤簿のポイント
受給条件のクリアしているかどうか、実際に判断するのは、各自治体の労働局です。労働局が出勤簿のどこをチェックしているのか、ポイントを紹介します。
出勤簿に記入する項目は5つ
労働局がチェックするためには、勤怠管理の正確なデータが必要です。提出する出勤簿には、下記の項目について必ず記入しましょう。
- 氏名
- 出勤日
- 始業・終業時刻
- 休憩時間
- 出勤簿等の保存期間および起算日
出勤簿でチェックする項目1
労働基準法における、残業時間の基準を超えていないか
労働局が出勤簿のデータをもとにチェックするポイントは3つあります。1つ目は、労働基準法における、残業時間の基準を超えていないかどうかです。労働基準法では、原則として1日8時間、1週間40時間を超えて労働させてはいけないことになっています。
出勤簿でチェックする項目2
36協定届で届け出ている残業時間におさまっているか
2つ目は、36協定で届け出ている残業時間におさまっているかどうかです。36協定を結ぶことで、厚生労働大臣の告示によって定められている、月45時間、年間360時間までの法定労働時間外の労働が認められますが、この時間を超えて労働させてはいけないことになっています。
臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない場合は、特別条項付きの36協定を締結する必要があります。
なお、労働基準法が2019年4月に改正され、月45時間、年間360時間までの法定労働時間外の労働は、厚生労働大臣の告示による上限から、法律による上限に変わりました。また、特別条項付きの36協定を締結しても、次の4項目を守らなければならなくなりました。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計について「2カ月平均」「3カ月平均」「4カ月平均」「5カ月平均」「6カ月平均」が全て1月当たり80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6カ月が限度
違反した場合は、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されるおそれがあるので、改めて時間外労働の時間を確認しましょう。時間外労働の上限規制は、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用されます。
出勤簿でチェックする項目3
雇用契約書や就業規則、賃金規程の内容に沿っているか
3つ目は、雇用契約書や就業規則、賃金規程の内容に沿っているかどうかです。雇用契約書とは、事業者と労働者とで雇用契約の内容について互いに認めたことを証明するものです。就業規則とは、賃金や労働時間、労働条件などについて事業場ごとに定めたものです。また、賃金規定とは、その名の通り、賃金の取り決めを記載した書類になります。
労働局は、こうした制度や契約書、規則などと出勤簿のデータを照らし合わせて、定められた内容と実際の労働時間や有給取得の日数などにズレがないか、チェックしています。就業規則などをまだ規定していない場合は、厚生労働省が規定例や解説を掲載しているのでこちらを参考に準備を進めると良いでしょう。この分野のプロである社会保険労務士に相談する方法もあります。
賃金台帳と照らし合わせて未払い賃金もチェック
このほかにも、助成金を申請する際に、出勤簿とともに提出が必要な賃金台帳と照らし合わせることで、サービス残業だけでなく、未払い賃金などの違法行為をチェックしています。適正に勤怠管理や給与計算を行い、給与を支給している事業者が、助成金を受給できるのです。
出勤簿は申請後も提出を求められる場合がある
助成金を申請した後も、支給する事業者としてふさわしいかどうかチェックするために、労働局が現地調査を行う場合があります。この時、改めて出勤簿などの書類の提出を求めてくることがあります。提出できなかった場合は、助成金が不支給となるケースもあり得るので、助成金を申請した後も、出勤簿はしっかり管理しましょう。
まとめ
勤怠管理は、事業者の義務なので、適正に記録・管理する必要があります。起業したばかりの事業主であっても、時間がないから手が回らない、では済まされません。また、これから起業を考えている方は、勤怠管理の方法についても検討しておきましょう。
勤怠管理を見直したり、新しく整える際は、専門家のアドバイスも受けられます。社会保険労務士に一度、相談してみてはいかがでしょうか。
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