厚生労働省が提供する助成金の代理申請を業務とする社会保険労務士は、そのほかの士業と何が違うのでしょうか。今回は社労士が助成金の代理申請ができる理由と併せて、いわゆる8士業の業務内容や違法な業者の見分け方、社労士の中でも助成金の代理申請を得意とする方を選ぶ方法について紹介します。
目次
助成金申請の代行ができるのは社会保険労務士だけ
助成金の中でも、厚生労働省が提供する助成金を代理申請できるのは、社会保険労務士に限られています。その理由は、厚労省が提供する助成金の財源にあります。
助成金の書類作成や申請は、社労士の独占業務と法で定められている
厚生労働省が提供する助成金は、雇用保険料を財源とし、雇用保険事業の一部として、雇用の維持や生産性の向上、働き方改革を目的に支給されます。雇用保険は5つある社会保険の1つであり、社会保険労務士法では、この社会保険の専門家として社労士が規定されています。
また、社会保険労務士法では、厚労省が提供する助成金の申請書の作成や、行政機関への提出などの業務が、社労士の独占業務だと定めています。
補助金や、厚労省以外が支給する助成金は社労士以外でも代理申請できる
助成金と呼ばれるものには、厚生労働省が提供する雇用関係の助成金以外も存在します。代表的なものとして都道府県の自治体が独自に支給する助成金や奨励金があります。また、助成金と似たものに補助金があります。補助金とは、産業の振興を支援するため、経産省や自治体、各種団体が提供しているものです。
このように、厚生労働省が提供する助成金以外にも、様々な助成金や奨励金、補助金があり、厚労省管轄の助成金を除いて社労士の資格を持たないコンサルタントなども申請することができます。
弁護士事務所や税理士事務所が、助成金の代理申請をできる理由とは?
弁護士や税理士など、社会保険労務士以外の士業が助成金を代理申請することは違法です。しかし、弁護士事務所や税理士事務所の中には、助成金の代理申請を行っているところもあります。
このような事務所があるのは、社労士が事務所に在籍していたり、業務提携する社労士事務所があるなどして、その社労士が業務を行っているからです。また、弁護士は法律の専門家であることから、社労士としても登録が可能で、助成金の代理申請を行うことができます。
社労士に助成金の代理申請を依頼しなくても、申請はできる
社会保険労務士は助成金の専門家ですが、助成金を申請する際に依頼しなければならないということはありません。社労士は助成金の代理申請ができるというだけなので、自社内で申請書類を作成すれば、社労士に依頼せずとも提出することができます。
違法業者の存在に厚労省も注意喚起している
社会保険労務士の資格がないにもかかわらず、助成金の代理申請を請け負うために、助成対象かどうかの無料診断や、支給額の無料査定を持ちかけてくる、違法な業者が存在します。中には、厚生労働省やハローワークから委託を受けて助成金の代理申請を行うと勧誘する違法な業者もいます。委託を受けているといった勧誘は、必ず断りましょう。
もし、違法業者に代理申請を依頼して、助成金が支給された場合、不正受給と判断されます。支給された助成金の返還するだけでなく、違反金の支払いや企業名の公表といったペナルティが課せられるので、注意しましょう。
8士業の業務範囲とは
社会保険労務士を含む士業と呼ばれる主な職種は、8つあります。それは社労士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、弁理士、海事代理士、行政書士です。それぞれの業務が社労士とどう異なるのか紹介します。
社会保険労務士は社会保険や労務に関する専門家
社会保険労務士は、厚生労働省が所管する国家資格を持つ、社会保険や労務に関する専門家です。社労士の業務は、採用から退職までの社会保険や労務に関する問題を解決するアドバイスや、年金に関する相談まで、業務の内容は広範囲にわたります。雇用関係の助成金にも精通しており、士業の中で唯一助成金の代理申請ができるので、助成金の活用や申請で分からないことがあれば、社労士に相談しましょう。
税理士は税務に関する専門家
税理士は、国税庁が所管する国家資格を持つ、税務に関する専門家で、税務代理、税務書類の作成、税務相談、会計を業務としています。税理士に経理を依頼している場合、支給された助成金の会計処理を適切に行ってくれます。
「助成金の会計処理の方法は? 計上時期や勘定科目から税対策まで解説」を詳しく見る
弁護士は法律の専門家
弁護士は、法務省が管轄する司法試験に合格し、司法修習を終了した法律の専門家です。
弁護士の業務は、法律に関する相談から、代理人としての交渉、係争など、様々なトラブルの解決です。法律の専門家である弁護士は、社会保険労務士としても登録することができ、登録済みの弁護士は助成金の代理申請ができます。
顧問弁護士を抱えている方で、助成金の代理申請を検討しているのであれば、まず顧問弁護士が社労士の資格を持っていないか確認してみましょう。
行政書士は街の法律家とも呼ばれる行政手続きの専門家
行政書士は、総務省が管轄する国家資格を持つ、開業手続きや農地の宅地転換などの許認可申請の専門家で、街の法律家とも呼ばれています。また、権利義務や事実証明に係る書類の作成など、予防法務の専門家でもあります。予防法務の業務としては、官公庁に提出する許認可などの申請書類の作成や、提出手続の代理、遺言書などの権利義務や事実証明に関する契約書の作成、行政不服申立て手続代理などを行います。
司法書士は身近なくらしの中の法律家と呼ばれる司法手続きの専門家
司法書士は、法務省が管轄する国家資格を持つ、不動産や法人登記手続、裁判書類の作成に関する専門家です。具体的には、家や土地、権利証、借金、相続に関するトラブルから日常生活、労働に関するトラブルまで、「身近なくらしの中の法律家」として、相談や書類の作成を行っています。
土地家屋調査士は土地や家屋に関する調査測量の専門家
土地家屋調査士は、法務省が管轄する国家資格を持ち、不動産の表示に関する登記について、必要な土地や家屋に関する調査や測量を行う専門家です。不動産の状況を正確に登記記録に反映することで、不動産取引の安全を確保したり、国民の財産を明確にする役割を担っています。
弁理士は知的財産に関する専門家
弁理士は、特許庁が管轄する国家資格を持つ、知的財産に関する専門家です。主な業務は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの知的財産権を取得したい方のために、特許庁へ代理申請を行うことです。また、知的財産権の取得についての相談や、自社製品の模倣対策、他社の権利侵害への予防など、知的財産全般についての助言やコンサルティングも行います。
海事代理士は海事行政に関する行政手続きの専門家
海事代理士は、国土交通省が管轄する国家資格を持つ、海事行政に関する行政手続きに関する専門家です。行政書士や司法書士と同じような職種ですが、海事に特化しているのが特徴です。
社労士を選ぶときは、助成金に詳しい社労士を
社労士の業務は幅広く、それぞれに得意分野があります。助成金の制度は毎年変わるため、助成金の代理申請を得意としている社労士を選びましょう。助成金に詳しい社労士であれば、申請書類を作成するためのコツについてアドバイスを受けられます。また、受給条件をクリアすれば同時に2つの助成金が支給される、併給可能な助成金など、お得な情報も得ることができます。助成金の代理申請をお考えの事業主は、無料相談を活用して助成金に詳しい社労士を探しましょう。
社労士に助成金の申請代行を依頼する場合は、顧問契約を締結した後に依頼するか、スポットでの依頼が可能なケースがあります。顧問契約を締結した場合は代行手数料が低料率になるのが通例のようです。
まとめ
社労士は、助成金の代理申請の専門家ですが、助成金の申請自体は、社員でも行うことができます。まずは申請のハードルが低い助成金の活用から取り組んではいかがでしょうか。申請する際には、申請書類の記入項目をガイダンスし、スムーズな書類作成をサポートする助成金クラウドのご利用をご検討ください。
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