助成金ノウハウ情報

雇用調整助成金の活用で、解雇せずに事業の縮小が可能に(新型コロナウイルス感染症含む)

雇用調整助成金は、経済上の理由で事業縮小を余儀なくされた場合に、解雇ではなく一時的な休業、教育訓練、出向によって雇用を調節し、雇用の維持を図る事業主を助成するものです。この記事では支給される金額や条件、申請時の注意点を紹介します。


新型コロナウイルス感染症の影響により、特例が実施されています。令和2年4月1日から令和3年4月30日まで
の間は、緊急対応期間として特例措置が上乗せされます。雇用保険適用者以外の方向けには緊急雇用助成金という別の助成金が用意されています。
特例措置とは、日額上限を15,000円まで引き上げ、助成率10/10等の通常の雇用調整助成金の枠組みを超える内容となっています。

主な発表内容
1.小規模事業主の申請手続を「助成額=実際に支払った休業手当額×助成率」に簡略化

2.雇用調整助成金のオンライン申請開始

3.休業等計画届の提出が不要(初回を含む全て)

4.助成額の算定方法の簡略化(源泉所得税の納付書可、所定労働日数の算定方法を簡素化)

5.申請様式の簡略化、削減(助成額算定書の廃止)

 

以下すでに発表されている内容

① 助成率の引き上げ
上記期間内、中小企業については2/3から4/5へ、大企業については1/2から2/3へ助成率を引き上げ。解雇等を行わず、雇用を維持した場合、中小企業については4/5から9/10へ、大企業については2/3から3/4へ助成率を引き上げ。さらに、休業要請対象で、休業手当の支払い率が60%を超える場合、60%を超えた分の助成率は100%と拡大されています。
→6/12、助成率10/10へ引き上げられました。

② 計画届の事後提出期限がさらに延長(4/10追加)
既に、令和2年5月31日までの事後提出が認められていましたが、6月30日まで延長されました。
→5/19、計画届の提出は不要と発表されました。
→8/26、計画の初日が6月末以前の場合は9月末まで提出期限が延長されました。

③ 生産指標の要件が緩和(4/10追加)
計画届の提出があった月の前月と前年同月比で10%の減少が必要でしたが5%減少に緩和されました。

④ 支給限度日数の除外(4/10追加)
この期間中の休業は、1年間に100日間の支給限度日数と別枠となりました。

⑤ アルバイトやパートの方も対象に(4/10追加)
雇用保険に加入していない労働者も、週20時間未満の場合対象となりました。

⑥ 申請書類が大幅に簡素化(4/10追加)
休業日数を日毎から合計に、残業相殺の停止、添付書類の削減など大幅に簡素化されました。
→5/19、さらに簡素化されました、

⑦ 生産指標の確認対象期間を3か月から1か月に短縮します。
通常、3ヶ月を対象に販売量、売上高等の生産指標を確認しますが、対象期間が直近1ヶ月に短縮されます。

⑧ 最近3か月の雇用指標が対前年比で増加していても助成対象とします。
通常、雇用者数の増減を示す雇用指標が前年同期比で一定数増加している場合は助成対象となりませんが、その要件が撤廃されます。

⑨ 事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象とします。
令和2年1月24日時点で事業所設置後1年未満の事業主については、生産指標を令和元年12月の指標と比較し、事業所設置から初回の計画届前月までの実績で確認します。

詳しくは厚生労働省の雇用調整助成金のWebページをご覧ください。

 

以下の情報は特例措置追加以前の通常時の情報ですのでご注意ください。

雇用調整助成金の支給金額は労働者の処遇によって変わる

雇用調整助成金の支給金額は事業縮小の際の労働者の処遇によって変わります。雇用調整を行う際に認められている従業員の処遇は休業、教育訓練、出向の3種類があり、それぞれ支給金額の計算方法が異なります。また、中小企業の方が大企業よりも支給金額が大きくなります。

休業で支給される金額は休業手当の最大3分の2

休業を実施した場合、事業主が支払った休業手当負担額に中小企業の場合2/3、中小企業以外の場合1/2を乗じた金額が支給されます。

休業手当とは、事業所の前年度の1人1日当たりの平均賃金額に、休業手当など支払い率を乗じて算出します。休業手当の支払い率は、就業規則や労働協約に特別の定めがない限り100%とします。ただし、1人1日当たりの金額は、雇用保険基本手当日額の最高額を上限とします。

また、支給対象となる期間は1年で100日、3年で150日が上限で、1日当たりの金額に日数を掛けた金額が支給されます。

支給額
助成内容と受給できる金額 大企業 中小企業
休業を実施した場合の休業手当または教育訓練を実施した場合の賃金相当額、出向を行った場合の出向元事業主の負担額に対する助成(率)
※対象労働者1人あたり8,260円が上限です。(平成31年3月18日現在)
1/2 2/3
教育訓練を実施したときの加算(額) (1人1日当たり)1,200円

 

教育訓練で支給される金額は、1日当たり1200円が追加に

教育訓練を実施した場合、教育訓練を実施した場合の賃金に相当する額に、中小企業の場合2/3、中小企業以外の場合1/2を乗じた金額に、1人1日あたり1200円が追加で支給されます。

出向で支給される金額は、通常賃金の最大1/3

社員を一時的に出向させた場合、出向前の通常賃金の1/2を上限とした出向元事業主の負担額に、中小企業の場合2/3、中小企業以外の場合1/2を乗じた金額が支給されます。

ただし、1人1日当たりの金額は、雇用保険基本手当日額の最高額に330/365を乗じた金額を上限とします。対象となる支給対象期間は30日以上、1年以内で、1日当たりの金額に日数を掛けた金額が支給されます。

雇用保険基本手当日額とは失業給付の1日当たりの金額

雇用調整助成金の上限基準となる、雇用保険基本手当日額とは、失業給付の1日当たりの金額です。金額は離職者の離職直前の6カ月間に支払われた賃金から算出した賃金日額に基づいて算定されますが、この算定方法は年齢区分などによって計算方法が異なります。

この基本手当日額の最高額は、毎月勤労統計の平均定期給与額の増減により毎年8月1日に変更されます。平成30年8月1日からの基準では、最高金額が8,260円となっています。

雇用保険基本手当日額
賃金日額(w円) 給付率 基本手当日額(y円)
◆離職時の年齢が29歳以下(※1)
2,480円以上4,970円未満 80% 1,984円〜3,975円
4,970円以上12,210円以下 80%〜50% 3,976円〜6,105円(※2)
12,210円超13,500円以下 50% 6,105円〜6,750円
13,500円(上限額)超 6,750円(上限額)
◆離職時の年齢が30〜44歳
2,480円以上4,970円未満 80% 1,984円〜3,975円
4,970円以上12,210円以下 80%〜50% 3,976円〜6,105円(※2)
12,210円超14,990円以下 50% 6,105円〜7,495円
14,990円(上限額)超 7,495円(上限額)
◆離職時の年齢が45〜59歳
2,480円以上4,970円未満 80% 1,984円〜3,975円
4,970円以上12,210円以下 80%〜50% 3,976円〜6,105円(※2)
12,210円超16,500円以下 50% 6,105円〜7,495円
16,500円(上限額)超 7,495円(上限額)
◆離職時の年齢が60〜64歳
2,480円以上4,970円未満 80% 1,984円〜3,975円
4,970円以上10,980円以下 80%〜45% 3,976円〜4,941円(※2)
10,980円超15,740円以下 45% 4,941円〜7,083円
15,740円(上限額)超 7,083円(上限額)

 

年齢 変更前(円) 変更後(前年度増減)(円)
59歳以下 6,070 6,105(+35)
60〜64歳 4,914 4,941(+27)

 

年齢 変更前(円) 変更後(前年度増減)(円)
59歳以下 1,821 1,831(+10)
60〜64歳 1,474 1,482(+8)

 

雇用調整助成金は、事業主の種類によっては対象期間が長くなる

事業主の種類によっては、支給対象となる期間が長くなり、期間が長い分助成金の金額も上がります。特に雇用の維持その他の労働者の雇用の安定を図る必要があるものとして厚生労働大臣が指定する「雇用維持等地域事業主」の場合1年間に伸びます。

ある企業が倒産あるいは生産が激減した場合に関連する事業の雇用に影響が及ぶとして厚生労働大臣が指定する「大型倒産事業主または大型生産激減事業主の関連事業主」や、労働者の雇用が不安定な港湾事業に携わる「認定港湾運送事業主」の場合、2年間が支給対象となります。

雇用調整助成金の対象になる3つの措置と条件

雇用調整助成金の対象となる措置は3種類あり、対象となる事業主は要件をすべて満たしていることが必要です。ちなみに、この条件に出てくる「判定基礎期間」とは、事業所における賃金締め切り日の翌日から次の賃金締め切り日までの期間をいいます。

雇用調整助成金の対象になる休業の条件は5項目

休業により雇用調整を行った場合、次の1から5の条件すべてに当てはまる必要があります。

  • 労使間の協定により行われるものであること
  • 「判定基礎期間」における対象労働者に係る休業または教育訓練の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の1/20(大企業の場合は1/15)以上となるものであること
  • 休業手当の支払いが労働基準法第26条の規定に違反していないものであること
  • 所定労働日の所定労働時間内において実施されるものであること
  • 所定労働日の全1日にわたるもの、または当該事業所における対象労働者全員について一斉に1時間以上行われるもの

雇用調整助成金の対象になる教育訓練は5項目

雇用調整の間に教育訓練を実施した場合、次の1から5の条件すべてに当てはまる必要があります。

  • 労使間の協定により行われるものであること
  • 「判定基礎期間」における対象労働者に係る休業または教育訓練の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の1/20(大企業の場合は1/15)以上となるものであること
  • 職業に関連する知識、技術を習得させ、または向上させることを目的とする教育、訓練、講習などであって、かつ、受講者を当該受講日に業務(本助成金の対象となる教育訓練を除く)に就かせないものであること
  • 所定労働日の所定労働時間内において実施されるものであること
  • 次のaまたはbに該当するものであること
    • 事業所内訓練の場合
      事業主が自ら実施するものであって、受講する労働者の所定労働時間の全1日または半日
      (3時間以上で所定労働時間未満)にわたり行われるものであること
    • 事業所外訓練の場合
      a以外の教育訓練で、受講する労働者の所定労働時間の全1日または半日(3時間以上で所定労働時間未満)にわたり行われるものであること

雇用調整助成金の対象になる出向の条件は13項目

雇用調整中に労働者を出向させた場合、助成金の対象になるには以下の1~13の条件すべてに当てはまる必要があります。

  • 雇用調整を目的として行われるものであって、人事交流のため、経営戦略のため、業務提携のため、実習のためなどに行われるものではなく、かつ、出向労働者を交換しあうものでないこと
  • 労使間の協定によるものであること
  • 出向労働者の同意を得たものであること
  • 出向元事業主と出向先事業主との間で締結された契約によるものであること
  • 出向先事業所が雇用保険の適用事業所であること
  • 出向元事業主と出向先事業主が、資本的、経済的・組織的関連性などからみて、独立性が認められること
  • 出向先事業主が、当該出向労働者の出向開始日の前日から起算して6カ月前の日から1年を経過した日までの間に、当該出向者の受入れに際し、その雇用する被保険者を事業主都合により離職させていないこと
  • 出向期間が3カ月以上1年以内であって出向元事業所に復帰するものであること
  • 本助成金などの対象となる出向の終了後6カ月以内に当該労働者を再度出向させるものでないこと
  • 出向元事業所が出向労働者の賃金の一部(全部を除く)を負担していること
  • 出向労働者に出向前に支払っていた賃金とおおむね同じ額の賃金を支払うものであること
  • 出向元事業所において、雇入れ助成の対象となる労働者や他の事業主から本助成金などの支給対象となる出向労働者を受け入れていないこと
  • 出向先事業所において、出向者の受入れに際し、自己の労働者について本助成金などの支給対象となる出向を行っていないこと

雇用調整助成金の対象になる事業主の要件は3種類

事業主の区分ごとに満たすべき事業主の要件は変わります。この区分は、以下の4つの区分があります。

  • 一般事業主(下記2から4以外の事業主)
  • 特に雇用の維持その他の労働者の雇用の安定を図る必要があるものとして厚生労働大臣が指定する地域(雇用維持等地域)内に所在する事業所の事業主(雇用維持等地域事業主)
  • えば、過去に夕張地域がこの雇用維持等地域に指定された例があります。
  • 厚生労働大臣が指定する事業主(大型倒産事業主または大型生産激減事業主)の関連事業主(下請事業主など)
  • 企業の多い大企業が倒産したり生産を激減させた場合、厚生労働省がこの指定を行い、関連企業の労働者の失業を予防します。
  • 認定港湾運送事業主

事業主区分が一般事業主の場合

次の1~3のすべてを満たすことが必要です。

  • 売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近3カ月間の月平均値が、前年同期に比べ10%以上減少していること
  • 雇用保険被保険者数および受け入れている派遣労働者数の最近3カ月間の月平均値が、前年同期と比べ、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上増加していないこと
  • 過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設定する場合、直前の対象期間の満了の日の翌日から起算して一年を超えていること

事業主区分が厚生労働大臣が指定する事業主の関連事業主の場合

厚生労働大臣が指定する事業主の関連事業主の場合、売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近3カ月間の月平均値が、前年同期に比べ減少している必要があります。

事業主区分がその他の場合

特に雇用の維持その他の労働者の雇用の安定を図る必要があるものとして厚生労働大臣が指定する地域(雇用維持等地域)内に所在する事業所の事業主(雇用維持等地域事業主)や、認定港湾運送事業主の場合、以下の2つを満たさねばなりません。

  • 売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近3カ月間の月平均値が、前年同期に比べ減少していること
  • 雇用保険被保険者数の最近3カ月間の月平均値が前年同期に比べ増加していないこと

雇用調整助成金を受給するまでの4つのステップ

雇用調整助成金の申請で注意すべきポイントは、休業・教育訓練・出向を実施する前に計画届を提出することです。事前に計画届がない場合は、助成金が支給されません。なお、判定基礎期間とは、事業所における措置を実施した日を含む賃金締め切り日の翌日から次の賃金締め切り日までの期間をいいます。

雇用調整助成金の流れ

雇用調整助成金の事前に提出が必要な書類は3種類

事前に提出する書類は次の3種類です。提出する締め切りは、雇用調整助成金の申請が初めての場合は雇用調整を行う2週間前をめどに提出、2回目以降の雇用調整の場合は、前日までに提出が必要です。

  • 休業等実施計画書、あるいは出向実施計画書
  • 雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書
  • 雇用調整実施事業所の雇用指標の状況に関する申出書

雇用調整助成金の支給申請に必要な書類は、措置によって異なる

支給申請に必要な書類は、休業・教育訓練・出向それぞれの措置で異なります。

休業で必要な書類は6種類

休業を行った場合は、次の6種類の書類の提出が必要です。

  • 支給申請書(休業など)
  • 助成額算定書
  • 休業・教育訓練実績一覧表及び所定外労働などの実施状況に関する申出書
  • 給要件確認申立書
  • 労働保険料に関する書類
  • 労働・休日及び休業・教育訓練の実績に関する書類

教育訓練で必要な書類は6種類

教育訓練を行った場合は、次の6種類の書類の提出が必要です。

  • 支給申請書(休業など)
  • 助成額算定書
  • 休業・教育訓練実績一覧表及び所定外労働などの実施状況に関する申出書
  • 給要件確認申立書
  • 労働保険料に関する書類
  • 労働・休日及び休業・教育訓練の実績に関する書類

出向で必要な書類は6種類

出向を行った場合は、次の6種類の書類の提出が必要です。

  • 支給申請書(出向)
  • 出向先事業所調書
  • 出向に関する確認書
  • 出向元事業所賃金保証額・負担額調書
  • 支給要件確認申立書
  • 出向の実績に関する書類

災害時など緊急時には支給条件が緩和されることもある

雇用調整助成金は経済上の理由で事業縮小を余儀なくされた事業者を助成金するものですが、災害など緊急時には支給条件が緩和されることがあります。災害に伴う経済上の理由とは、以下のようなケースです。

  • 取引先の被害などのため、原材料や商品などの取引ができない場合
  • 交通手段の途絶により、来客がない、従業員が出勤できない、物品の配送ができない場合
  • 電気・水道・ガスなどの供給停止や通信の途絶により、営業ができない場合
  • 風評被害により、観光客が減少した場合
  • 事業所、設備などが損壊し、修理業者の手配や修理部品の調達が困難なため、早期の修復が不可能であることにより、事業活動が阻害される場合

緩和される条件は過去の例では以下の通りです。

  • 生産指標の確認期間を3カ月から1カ月へ短縮する(※計画届提出月の前月又は前々月と前年同期を比較し、売上高などが10%以上減少していることを確認します)
  • 起業後1年未満の事業主についても助成対象とする
  • 最近3カ月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とする

また、本来は計画届を2週間前に提出する必要がありますが、事後の申請でも支給できるよう特例が認められたことがあります。普段、縁がない助成金かもしれませんが、いざという時に助成金の知識があると、従業員を解雇せず事業の復興に役立てることができます。

まとめ

雇用調整助成金は、事業活動縮小のための雇用調整を助成する助成金です。条件が特殊なので、当てはまらない方も多いでしょう。しかし、経済危機や災害時など、緊急の場合には頼りになる助成金です。頭の片隅に置いておいて、いざという時には活用して労働者の雇用を守りましょう。

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