両立支援等助成金(出生時両立支援コース)は、男性が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場づくりに取り組み、男性の育児休業や育児目的休暇の利用者がいる事業主に支給される助成金です。育児休業や育児目的休暇の違いのほか、支給額や支給対象の取り組み、申請方法などを紹介します。
目次
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)は、男性も子育てができる環境づくりを支援する助成金
世帯主が働いている家庭の過半数が共働きという中にあって、男性の育児休業取得率はわずか5.14%に止まっています。厚生労働省の調査結果を受けて、政府は2020年までの目標として、男性の育児休業取得率13%を掲げ、男性も子育てができる環境づくりを推進しています。その取り組みの1つが、この両立支援等助成金(出生時両立支援コース)です。
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)で支給の対象になるのは、育休と略して呼ばれる中でも、育児休業と育児目的休暇の2つです。この2つの違い、さらに育児休暇との違いについて説明します。
育児休業とは、法律に規定される1歳未満の子を養育するためにする休業
育児休業とは育児・介護休業法で定められている制度で、原則として1歳に満たない子を養育するために休業することをいいます。育児休業を取得することで、育児休業給付金が支給されます。法律上は無期雇用労働者のみが育児休業の対象ですが、両立支援等助成金(出生時両立支援コース)では、雇用期間が1年未満の有期雇用の労働者であっても育児休業として取り扱います。
育児休業の期間は、企業の規模によって異なります。中小企業の場合は連続5日、中小企業以外は連続14日と定められています。この育児休業中に就業した場合、労使合意の上であっても。両立支援等助成金(出生時両立支援コース)では、育児休業と判断されません。また、育児休業期間の全てが休日、祝日などの場合は対象になりません。労働者から申し出のあった育児休業期間中に所定労働日が含まれている必要があります。
育児目的休暇とは、育児のために分割して取得できる休暇
育児目的休暇も、育児・介護休業法で定められている制度で、男性の労働者が子の出生前後に育児や配偶者の出産支援のために、分割して取得できる休暇を指します。ただし、子の看護休暇、介護休暇及び年次有給休暇は別の制度とみなされ、育児目的休暇には含みません。育児休暇とは、法で定められているものではありません。一般的に育児のために取得する休暇全般を指します。
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の支給額は、助成対象の育休によって異なる
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)で助成の対象になる育休は、育児休業と、育児目的休暇の2つがあります。それぞれの支給金額は、条件によって金額が異なります。また、生産性要件を満たすことにより助成金が増額されます。
育児休業の支給金額は、育休取得の人数や会社の規模で決まる
育児休業の支給額は、中小企業か中小企業以外か、育休を取得した人数によって異なります。また、育休を取得した人が2人目以降の場合は、育休を取得した日数によっても、支給額は異なります。
このほか、男性労働者の育児休業取得前に個別面談を行うなど、育児休業の取得を後押しする取り組みを実施した場合に、個別支援加算として助成金が上積みされます。
中小企業 | 中小企業以外 | |||
項目 | 通常の場合 | 生産性要件を満たした場合 | 通常の場合 | 生産性要件を満たした場合 |
1人目の育休取得 | 570,000円 | 720,000円 | 285,000円 | 360,000円 |
個別支援加算 | 100,000円 | 120,000円 | 50,000円 | 60,000円 |
中小企業 | |||
項目 | 育休取得日数 | 通常の場合 | 生産性要件を満たした場合 |
2人目以降の育休取得 | 育休5日以上 | 142,500円 | 180,000円 |
育休14日以上 | 237,500円 | 300,000円 | |
育休1ヶ月以上 | 332,500円 | 420,000円 | |
個別支援加算 | 50,000円 | 60,000円 |
中小企業以外 | |||
育休取得日数 | 通常の場合 | 生産性要件を満たした場合 | |
2人目以降の育休取得 | 育休14日以上 | 142,500円 | 180,000円 |
育休1ヶ月以上 | 237,500円 | 300,000円 | |
育休2ヶ月以上 | 332,500円 | 420,000円 | |
個別支援加算 | 25,000円 | 30,000円 |
育児目的休暇の支給額は、会社の規模で決まる
育児目的休暇の支給額は、中小企業か中小企業以外かで異なります。なお、支給される回数は、1事業主につき1回限りです。
中小企業 | 中小企業以外 | |||
通常の場合 | 生産性要件を満たした場合 | 通常の場合 | 生産性要件を満たした場合 | |
育休目的休暇の導入・利用 | 285,000円 | 360,000円 | 142,500円 | 180,000円 |
助成金が増額される生産性要件とは
生産性要件とは、生産性を高める取り組みを支援するために、生産性を向上させた会社へ支給する助成金の金額を割増する制度です。生産性要件が適用される条件は、次のいずれかになります。
- 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における生産性が、その3年度前に比べて6%以上伸びていること
- 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における生産性が、その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること
育児休業の場合、生産性要件をクリアすることで、支給額が増額になります。
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の対象になる条件は、事業主と労働者それぞれにある
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の対象になる労働者の条件は共通して2つあります。また、事業主の条件は、利用する制度が育児休業か育児目的休暇かによって変わります。
支給対象になる労働者の条件は、育児休業と育児目的休暇に共通する2項目
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の対象となる労働者の条件は次の2つです。
- 雇用保険の被保険者であること
- 男性であること
男女問わず育休を取りやすい環境整備を支援する助成金として、両立支援等助成金(育児休業等支援コース)があります。女性の育休取得の促進に取り組みたい方は、育児休業等支援コースを確認してください。
育児休業の支給対象になる事業主の条件は4項目
育児休業取得の支給対象になる事業主は、次の4つの条件を満たす必要があります。
- 2016年4月1日以降、男性が育児休業を取得しやすい職場風土作りのために次のような取り組みを行ったこと。ただし、支給対象となった男性労働者の育児休業の開始日の前日までにaからCのような取り組みのいずれかを行っていること
- 男性労働者を対象にした、育児休業制度の利用を促進するための資料等の周知
- 管理職による、子が出生した男性労働者への育児休業取得の勧奨
- 男性労働者の育児休業取得についての管理職向けの研修の実施
- 雇用保険の被保険者として雇用している男性労働者に、子の出生後8週間以内(子の出生日を含む)に開始している、連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業を取得させたこと。なお、育児・介護休業法第2条第1号に基づく休業であれば、子の出生日や出生日前に開始し、出生後8週間の期間を含む育児休業も対象になる。また、同一の子について、育児休業を複数回取得している場合でも、支給対象となるのはいずれか1回のみ
- 育児・介護休業法第2条第1号に規定する育児休業の制度及び同法第23条第1項に規定する育児のための短時間勤務制度について、労働協約または就業規則に規定していること。ただし、対象育児休業取得者が育児休業を開始する前に規定していること
- 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長に届け出ている。また、その一般事業主行動計画を公表し、労働者に周知するための措置を講じていること。次世代育成支援対策推進法第15条の2に基づく認定を受けた事業主を除く
令和3年度要件追加
男性労働者が育児休業を取得しやすい職場風土づくりの取組について、対象労働者の雇用契約期間中に行われていることが必要となります。
※対象労働者の育児休業の開始日の前日までに職場風土づくりの取組を行っていない場合、不支給となります(育児休業開始後の補正はできません。)。
※令和3年5月31日までに育児休業・育児目的休暇を開始した対象労働者については、2020年度の要件が適用となります。
育児目的休暇の支給対象になる事業主の条件は5項目
育児目的休暇の支給対象になる事業主は、次の5つの条件を満たす必要があります。
- 男性労働者が、子の出生前後に育児や配偶者の出産支援のために取得できる育児目的休暇の制度を新たに導入し、労働協約または就業規則に規定していること
- 男性労働者が育児目的休暇を取得しやすい職場風土作りのために次のような取り組みを行った。
- 男性労働者を対象にした、育児目的休暇制度の利用を促進するための資料等の周知
- 管理職による、子が出生した男性労働者への育児目的休暇取得の勧奨
- 男性労働者の育児目的休暇取得についての管理職向けの研修の実施
(支給対象となった男性労働者の育児目的休暇の取得日の前日までにaからcのような取り組みのいずれかを行っている必要がある)
- 雇用保険の被保険者として雇用している男性労働者に対して、子の出生前6週間から出生後8週間以内子の出生日も含むに、1の休暇制度に基づき、労働者1人につき合計して8日以上中小企業事業主は5日以上の育児目的休暇を取得させたこと
(所定労働日に取得した育児目的休暇が対象。すでに育児休業に入っている労働者が、当該休業中に育児休暇制度を利用しても支給対象とはならない) - 育児・介護休業法第2条第1号に規定する育児休業の制度及び同法第23条第1項に規定する育児のための短時間勤務制度について、労働協約または就業規則に規定していること。対象育児休業取得者が育児休業を開始する前に規定していること
- 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長に届け出ている。また、その一般事業主行動計画を公表し、労働者に周知するための措置を講じていること。次世代育成支援対策推進法第15条の2に基づく認定を受けた事業主を除く
支給対象になる事業主の条件のひとつ、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画とは
次世代育成支援対策推進法とは、次代の社会を担う子供を育成する家庭、事業主、地方公共団体や国の責務を明らかにし、支援対策を推進するための法律です。この法律により、条件を満たす事業主は行動計画を策定し、労働局に届ける義務が定められました。事業主の条件は、一般事業主と呼ばれる国や地方公共団体以外であり、雇用する労働者が101人以上の事業主は義務の対象、100人以下の場合は努力義務となっています。
また、策定が必要な行動計画は、労働者が仕事と子育ての両立ができる雇用環境の整備や、多様な労働条件の整備などに取り組むにあたり、計画期間や目標、目標達成のための対策の内容や時期を具体的に盛り込んだものです。
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の申請の流れは、育児休業と育児目的休暇で異なる
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の申請の流れは、育児休業か育児目的休暇かで異なります。取り組みの前に提出する書類や手続きはありませんが、要件を満たすために必要な手順があるため、それぞれの流れを確認しましょう。
育児休業の申請は5つのステップ
育児休業の申請を行う場合、まず男性が育児休業を取得しやすい職場風土を作るための取り組みが必要になります。
育児休業の受給申請の締め切りは、育児休業が明けてから2カ月以内
育児休業の受給申請の締め切りは、条件により異なります。会社ではじめて育児休業を取得する場合は、中小企業の場合は5日、中小企業以外の場合は14日が経過した翌日から、2カ月以内に受給申請を行います。それ以上の期間、育児休業を取得していた場合でもこの日数が適用されるので注意しましょう。
育児休暇を取得した方が2人目以降の場合、中小企業の場合は5日、14日、1カ月、中小企業以外の場合は14日、1カ月、2カ月を所定の日数として、その所定日数の翌日から2カ月以内に申請を行います。大企業で1カ月半の育児休業を取得した場合は、1カ月目の翌日から2カ月以内となります。
育児目的休暇の申請も5つのステップ
育児目的休暇を利用する場合、まず新たに育児目的休暇制度を就業規則か労働協約に記載する必要があります。育児目的休暇制度を新たに導入することが要件のひとつであるため、2018年3月31日以前に、育児目的休暇制度が導入されている場合は助成金の対象外となるので注意しましょう。
育児目的休暇の締め切りも、育休目的休暇が明けてから2カ月以内
育児目的休暇の受給申請の締め切りは、休暇の取得日数が中小企業は合計5日、中小企業以外は合計8日の制度利用の最終日の翌日から2カ月以内に支給申請を行います。
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の支給申請に必要な書類も、育児休業と育児目的休暇で異なる
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の支給申請に必要な書類は、育児休業と育児目的休暇で異なります。
育児休業取得の申請に必要な書類は9種類
育児休業取得に関する支給申請には次の9種類の書類が必要です。また、生産性要件を満たす場合は追加で10から11の2種類が必要になります。
- 「両立支援等助成金(出生時両立支援コース(男性労働者の育児休業))支給申請書」
- 労働協約または就業規則及び関連する労使協定
- 男性労働者が育児休業を取得しやすい職場風土作りの取組の内容を証明する書類及び取組を行った日付が分かる書類
- 対象育児休業取得者の育児休業申出書(育児休業の期間が変更されている場合は育児休業期間変更申出書)
- 対象育児休業取得者の育児休業前1カ月分及び育児休業期間中の就労実績が確認できる書類
例:育児休業取得者の出勤簿またはタイムカード及び賃金台帳 - 対象育児休業取得者の雇用契約期間の有無、育児休業期間の所定労働日が確認できる書類
例:労働条件通知書、就業規則、企業カレンダーなど - 対象育児休業取得者に育児休業に係る子がいることを確認できる書類及び当該子の出生日が確認できる書類
例:母子健康手帳の子の出生を証明する該当部分、健康保険証(子が対象育児休業取得者の被扶養者である場合)など - 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長に届け出ており、また、その一般事業主行動計画を公表し、労働者に周知するための措置を講じていることが分かる書類
例:自社のホームページの画面を印刷した書類など - (これまで雇用関係助成金を受給したことがない場合または過去に受給したことがある事業主で登録済の口座番号に変更がある場合のみ)支払方法・受取人住所届及び通帳の写し等支払い口座番号が確認できる書類
- 生産性要件算定シート及び算定の根拠となる証拠書類(損益計算書、総勘定元帳など)
- (生産性要件算定シートによる計算の結果、生産性の伸びが6%未満の場合)与信取引等に関する情報提供に係る承諾書
育児目的休暇の申請に必要な書類は8種類
育児目的休暇に関する申請には次の8種類の書類が必要です。また、生産性要件を満たす場合は追加で9から10の2種類が必要となります。
- 「両立支援等助成金(出生時両立支援コース(育児目的休暇))支給申請書」
- 労働協約または就業規則及び関連する労使協定
- 男性労働者が育児目的休暇を取得しやすい職場風土作りの取組の内容を証明する書類及び取組を行った日付が分かる書類
- 対象育児目的休暇取得者の育児目的休暇申出に係る書類及びその取得実績が確認できる書類
例:育児目的休暇取得者の出勤簿またはタイムカード及び賃金台帳 - 対象育児目的休暇取得者の育児目的休暇を取得した期間の所定労働日が確認できる書類
例:労働条件通知書、就業規則、企業カレンダーなど - 対象育児目的休暇取得者に当該休暇取得に係る子がいることを確認できる書類及び当該子の出生日または予定日が確認できる書類
例:母子健康手帳の子の出生を証明する該当部分、健康保険証(子が対象育児目的休暇取得者の被扶養者である場合)など - 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長に届け出ており、また、その一般事業主行動計画を公表し、労働者に周知するための措置を講じていることが分かる書類
例:自社のホームページの画面を印刷した書類など - (これまで雇用関係助成金を受給したことがない場合または過去に受給したことがある事業主で登録済の口座番号に変更がある場合のみ)支払方法・受取人住所届及び通帳の写し等支払い口座番号が確認できる書類
- 生産性要件算定シート及び算定の根拠となる証拠書類(損益計算書、総勘定元帳など)
- (生産性要件算定シートによる計算の結果、生産性の伸びが6%未満の場合)与信取引等に関する情報提供に係る承諾書
育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場づくりの取り組みとは
育児休業、育児目的休暇どちらを利用する場合も、育児休暇を取得しやすい職場づくりの取り組みが必要です。取り組みというと難しく感じるかもしれませんが、政府のイクメンプロジェクトで取り組みの事例が紹介されているので、事例を参考に取り組みを行うことができます。例として、次のものが挙げられているので、参考にしてください。
- 子が生まれた男性に対して、管理職による育休取得の勧奨を行う
- 管理職に対して、男性の育休取得についての研修を実施する
まとめ
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)は、男性の育児参加を支援する助成金です。育児休暇を取得する人数によって支給額は変わり、1人目の支給額が高く設定されています。まずは、1人目の育休取得を目指してはいかがでしょうか。
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)は、2020年で申請受付が終了します。自社の男性の育児参加を促進したいと考えている方は、早めに取り組みを始めましょう。書類申請に時間がかけられないという方は、手間をかけることなく、書類をスムーズに作成できる助成金クラウドをご活用ください。
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