助成金ノウハウ情報

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)は健康診断の実施で受給できる受給ハードルの低い助成金(令和3年度は諸手当制度共通化コースに統合・令和4年度は実質廃止)

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)は、有期雇用の労働者に健康診断を実施することで受給できる助成金です。助成金の中でも受給のハードルが低い、健康診断制度コースの支給額や受給条件と併せて、取り組みやすい健康診断も紹介します。

令和3年度よりキャリアアップ助成金(健康診断制度コース)は諸手当制度共通化コースに統合となりました。

令和4年度は諸手当制度共通化コースが「賞与・退職金制度導入コース」へと変更となり、健康診断は助成対象外となりました。

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)は法定外の健康診断で受給できる助成金

労働安全衛生法第66条では、次の条件に当てはまる労働者に、健康診断を行うことを事業主に義務付けています。

  • 雇用期間の定めのない者
  • 契約期間が1年以上である者
  • 契約更新により1年以上引き続き使用されている者
  • 契約更新により1年以上使用されることが予定されている者であり、かつ、その者の1週間の所定労働時間が、当該事業場において同種の業務に従事する通常労働者の1週間の所定労働時間の3/4以上であること

上記の対象に当てはまらない、有期雇用の労働者を対象とする健康診断は、法律上義務ではありません。キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)は、こうした有期雇用の労働者に、法定外の健康診断を延べ4人以上実施した事業主に、助成金を支給します。

支給額
中小企業 中小企業以外
支給額 通常の場合 生産性向上が認められる場合 通常の場合 生産性向上が認められる場合
1事業所当たり 380,000円 480,000円 285,000円 360,000円

 

中小企業の分類

産業分類 資本金の額・出資の総額 常時雇用する労働者の数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

 

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)は、生産性要件をクリアすることで受給額が最大48万円に

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)は1事業所あたり1回だけ申請が可能で、支給額は中小企業か中小企業以外かで異なります。
また、生産性要件をクリアすれば、受給額は増額になります。生産性要件とは、生産性を高める取り組みを支援するために、生産性を向上させた会社へ支給する助成金の金額を割増する制度です。生産性要件が適用される条件は、次のいずれかになります。

  • 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における生産性が、その3年度前に比べて6%以上伸びていること
  • 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における生産性が、その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)で生産性要件が適用された場合、中小企業であれば最大で48万円を受給することができます。

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)の支給対象になる条件は、労働者と事業主それぞれにある

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)の支給対象となるには、労働者と事業主の両方が条件を満たさなければなりません。

対象になる労働者の条件は4項目

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)の支給対象になる労働者の条件は、次の4項目です。

  • 支給対象事業主に雇用されている有期雇用の労働者などであること
  • 雇入時健康診断もしくは定期健康診断または人間ドックを受診する日に、当該対象適用事業所において、雇用保険被保険者であること
  • 健康診断制度を新たに設け実施した事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること
  • 支給申請日において離職していない者であること

ただし、実施する健康診断の種類が雇入時健康診断または定期健康診断の場合、次の条件の両方に労働者が当てはまる場合は対象から外れてしまうので注意が必要です。

  • 期間の定めのない労働契約により使用される者
  • その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の3/4以上の者

対象になる事業主の条件は7項目

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)の支給対象になる事業主の条件は、次の7項目です。

  • キャリアアップ計画書に記載されたキャリアアップ計画期間中に、事業主に実施が義務付けられていない有期雇用の労働者などを対象とする雇入時健康診断制度、もしくは定期健康診断制度、または有期雇用の労働者などを対象とする人間ドック制度(以下「健康診断制度」という)を就業規則か労働協約に規定した事業主であること
  • 1.の制度に基づき、キャリアアップ計画期間中に、雇用する有期雇用の労働者など延べ4人以上に実施した事業主であること
  • 支給申請日において当該健康診断制度を継続して運用している事業主であること
  • 当該雇入時健康診断制度または定期健康診断制度を規定した場合については、対象労働者に実施した当該雇入または定期健康診断の費用の全額を負担することを就業規則か労働協約に規定し、実際に費用の全額を健康診断実施機関または対象労働者に対して直接負担した事業主であること
  • 当該人間ドック制度を規定した場合については、対象労働者に実施した当該人間ドック制度の費用の半額以上を負担することを就業規則か労働協約に規定し、実際に費用の半額以上を健康診断実施機関または対象労働者に対して直接負担した事業主であること
  • 当該健康診断制度を実施するにあたり、対象者を限定する等実施するための要件(合理的な理由があるものに限る)がある場合は、当該要件を就業規則か労働協約に規定している事業主であること
  • 生産性要件を満たした場合の支給額の適用を受ける場合にあっては、当該生産性要件を満たした事業主であること

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)を受給するまでの5つのステップ

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)の申請で注意すべきポイントは、受給申請の前にキャリアアップ計画書と就業規則を労働局に提出しなければならないことです。また、支給を申請する期限は、健康診断を実施した日を含む月の分の賃金を支給した日の翌日から起算して2カ月以内です。

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)の流れ

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)を活用する前に提出が必要な2つの書類

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)の受給要件である、法定外の健康診断を実施する前に、提出しなければならない書類が2つあります。キャリアアップ計画と就業規則です。

キャリアアップの目標や期間を定めたキャリアアップ計画

キャリアアップ計画は、労働者のキャリアアップのために活用するコースや、期間などの計画、期間中に達成する目標や、目標達成のための施策を記載する書類です。キャリアアップ計画の内容は、しっかりと精査されるので、綿密な計画の立案が必要です。労働者のキャリアアップを支援するキャリアアップ管理者が、3年以上5年以内の計画期間を定め、どのような目的を立てて、その目的を達成するために行う、具体的な施策を記入しましょう。

健康診断制度を規定した就業規則

就業規則とは、職場のルールやマナーについてまとめた服務規律と、給料や時間外労働などの待遇をまとめた労働条件を記載した書類です。この2つが、キャリアアップ計画の内容と整合性が取れているか、厳正に審査されます。キャリアアップ助成金(正社員化コース)では、就業規則で有期雇用の労働者を無期雇用や正規雇用、無期雇用の労働者を正規雇用に転換する条件と、キャリアアップ計画に記載した目標が、合致していることが重要になります。

「助成金の申請で就業規則が必要? 対象の助成金や変更点を紹介」を詳しく見る

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)の支給申請に必要な書類は9種類

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)の支給申請に必要な書類は、次の9種類です。

  • 支給要件確認申立書
  • 支払方法・受取人住所届
  • 管轄労働局長の認定を受けたキャリアアップ計画書
  • 健康診断制度が規定されている就業規則か労働協約および健康診断制度が規定される前の就業規則
  • 常時10人未満の労働者を使用する事業主が健康診断制度を規定する前の就業規則か労働協約を作成していなかった場合にあってはその旨を記載した申立書
  • 対象労働者が健康診断を実施したことおよび実施日が確認できる書類(実施機関の領収書や健康診断結果表等(人間ドック受診に当たっては、受診項目の分かる書類))
  • 対象労働者の雇用契約書等
  • 対象労働者の労働基準法第108条に定める賃金台帳または船員法第58条の2に定める報酬支払簿(対象労働者の健康診断実施日を含む月分)
  • 中小企業事業主である場合、中小企業事業主であることを確認できる書類
  • 生産性要件に係る支給申請の場合の添付書類
    • 生産性要件算定シート
    • 算定の根拠となる証拠書類(損益計算書、総勘定元帳、確定申告書Bの青色申告決算書や収支内訳書など)

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)で支給対象になる健康診断は3種類

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)で受給の対象になる健康診断は、雇入時健康診断、定期健康診断、人間ドックの3種類です。

雇入時健康診断では11項目の診断が必須

雇入時健康診断とは、労働安全衛生規則第43条に規定されている、常時使用する労働者を雇い入れる際に行う健康診断をいいます。具体的には、次の項目について医師による健康診断を行わなければならないとされています。有期雇用の労働者にも、雇入時健康診断を行うことで、助成金が支給されます。

  • 既往歴及び業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  • 胸部エックス線検査
  • 血圧の測定
  • 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。)
  • 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査
  • 低比重リポ蛋たん白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋たん白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査
  • 血糖検査
  • 尿中の糖及び蛋たん白の有無の検査
  • 心電図検査

定期健康診断は、毎年行う11項目の健康診断

定期健康診断とは、労働安全衛生規則第44条に規定されている、常時使用する労働者に対して1年以内ごとに1回定期的に行う健康診断のことをいいます。具体的には、以下の11項目の診断を行います。有期雇用の労働者にも、雇入時健康診断を行うことで、助成金が支給されます。

  • 既往歴及び業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  • 胸部エックス線検査及び喀痰検査
  • 血圧の測定
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 尿検査
  • 心電図検査

人間ドックとは基本健康診断に加えて7種類から1種類を選ぶ健康診断

人間ドックとは、基本健康診断に加えて、追加で7種類の内のいずれかを行う健康診断のことを言います。定期的に行う必要がないため、事業主の費用負担を抑えることができます。また、追加で行う健康診断も、歯周疾患検診を実施することで、費用を抑えることができます。

基本健康診断とは、具体的には以下の項目の診断を行います。

  • 問診
  • 身体計測
  • 理学的検査
  • 血圧測定
  • 検尿(尿中の糖、蛋白、潜血の有無の検査)
  • 循環器検査(血液化学検査(血清総コレステロール、コレステロール、中性脂肪の検査))
  • 肝機能検査(血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナ-ゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)、ガンマーグルタミルトランスペプチターゼ(γ-GTP)の検査)
  • 腎機能検査
  • 血糖検査

また、7種類の内いずれかを行わなければならない健康診断は次から選びます。

  • 胃がん検診
  • 子宮がん検診
  • 肺がん検診
  • 乳がん検診
  • 大腸がん検診
  • 歯周疾患健診
  • 骨粗鬆症健診

有期雇用の労働者に人間ドックを実施することで、助成金が支給されます。

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)の申請前に、健康診断の費用負担の確認を

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)を申請する前に、健康診断の費用負担について確認しましょう。雇入時健康診断や定期健康診断の費用は全額、人間ドックの場合は半額以上を事業主が負担します。健康診断制度を一度就業規則で規定すると変更は難しいため、特に定期健康診断を規定する場合は、健康診断の費用が毎年発生することを念頭に置いて規定しましょう。

まとめ

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)は、健康診断を就業規則や労働協約に規定し、4人以上健康診断を実施した場合に支給される助成金です。助成金の中では、受給のハードルが低いのですが、事業主や社員が申請の手続きを行うと、どうしても時間がかかり、本業にしわ寄せがいきます。書類を効率よく作成するためにも、スムーズな種類作成をサポートする助成金クラウドを活用してはいかがでしょうか。

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