助成金ノウハウ情報

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は採用のミスマッチを防いで助成金も受給できる一石二鳥の助成金

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、就業が困難な方を一定期間試用雇用した場合に支給される助成金です。この記事では、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の支給額や、受給の条件、トライアル雇用終了後の措置や、試用期間との違いをご紹介します。

トライアル雇用とは、就職困難な方の常用雇用を目指す雇用

トライアル雇用とは、就業が困難な方を原則3カ月の一定期間試用雇用する制度です。常用雇用への移行を目的としていますが、適正や能力、職場環境が合わないと感じた場合は、トライアル終了時に雇用を終了することも可能な雇用形態です。

試用期間とトライアル雇用の違いは解雇しやすいかどうか

一般的に用いられる「試用期間」は、法的には「解雇権留保付き雇用契約」と呼ばれ、期間の定めのない雇用契約の最初の数カ月を、適性を確認するための期間とする契約です。

試用期間満了時の本採用の拒否は解雇とみなされ、通常の雇用より条件は緩和されますが、基本的には労働基準法が適用されるため、解雇は難しいものとなっています。解雇できるのは、採用前に知ることのできなかった情報や勤務状態などが試用期間中に判明し、客観的にみて解雇に相当すると認められる場合に限られます。

一方、トライアル雇用は一定期間、試用雇用する制度です。トライアル雇用中に職務に適性が無かったり、能力不足と判断した場合は、トライアル雇用後、常用雇用に移行する義務はありません。試用期間や通常雇用に比べて事業主側からの契約解除が簡単なのが、トライアル雇用の特徴です。

トライアル雇用を行うメリットは事業主・求職者双方にある

トライアル雇用のメリットは、就業が困難な求職者にとっては、就職の機会が広がり、仕事や企業についての理解を深めることができる点です。事業主にとっては、助成金がもらえることはもちろん、契約終了が簡単なため、求職者とのミスマッチを防ぐことができるのが最大のメリットです。

厚生労働省の調査によると、トライアル雇用した方の8割が、常用雇用に移行しています。助成金の対象が、就業困難な求職者とはいえ、雇用に値する方が多いことが分かります。

トライアル雇用を行う注意点は教育コストが高くなる可能性があること

トライアル雇用を行う上で、事業主が注意すべき点は、採用後の教育コストが、一般的な転職者に比べて高くなる可能性があることです。また、求職者が注意すべき点は、あくまでトライアル雇用であるため、会社が求める業務遂行の能力を満たせない場合は、常用雇用に移行しないことがあることです。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の支給金額は条件により異なる

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の支給の対象期間は、雇入れの日から1カ月単位で最長3カ月です。基本的に、1カ月単位で助成金の額が計算され、トライアル期間終了後にまとめて申請します。1カ月単位の助成金の額は、条件により異なります。

求職者が母子家庭の母や父子家庭の父の場合は最大15万円

求職者が母子家庭の母、父子家庭の父である場合は、月額5万円、最長3カ月分で15万円が支給されます。

事業主が若者雇用促進法に基づく認定事業主であり、求職者が35歳未満の場合は最大15万円

事業主がユースエール認定制度による認定を受けている場合で、求職者が雇入れ日の時点で35歳未満の場合は、月額5万円、最長3カ月分で15万円が支給されます。

ユースエール認定制度とは、若者雇用促進法に基づき若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況などが優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。認定された企業は融資や公共調達が受けられやすくなったり、採用においてハローワークで重点的にPRされるなど仕事の調達や優秀な人材の確保が期待できます。また、ユースエール認定マークを自社の商品や広告に使用可能であるため、企業のイメージアップにもつながります。

上記以外の場合は最大12万円

上記2つの場合に当てはまらない場合は、月額4万円、最長3カ月分で12万円が支給されます。

基本的に1カ月単位での支給だが、日割りでの支給も場合により可能

支給額は基本的に1カ月単位で計算されますが、以下の条件を満たす場合、日割りでの計算も認められています。

  • 求職者が対象期間の途中で以下の理由により離職した場合
    • 本人の責めに帰すべき理由による解雇
    • 本人の都合による退職
    • 本人の死亡
    • 天災その他のやむを得ない理由により、事業の継続が不可能になったことによる解雇
  • トライアル雇用の支給対象期間の途中で常用雇用へ移行した場合
  • 求職者の都合による休暇や、事業主の都合による休業があった場合

実際に就労した日数を就労予定日数で割り、その割合によって支給金額が変わります。求職者が途中退職した場合や、やむを得ない休業などがあった場合でも、日割りで助成金がもらえるので、安心してトライアル雇用で採用することができます。

母子家庭の母など、または父子家庭の父以外の場合の支給額
割合 月額
A≧75% 40,000円
75%>A≧50% 30,000円
50%>A≧25% 20,000円
25%>A>0% 10,000円
A=0% 0円

 

母子家庭の母など、または父子家庭の父の場合の支給額
割合 月額
A≧75% 50,000円
75%>A≧50% 37,500円
50%>A≧25% 25,000円
25%>A>0% 12,500円
A=0% 0円

 

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の支給対象になる求職者・事業主の条件とは

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の支給対象になるには、求職者と事業主がそれぞれの条件を満たす必要があります。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の支給対象になる求職者の条件は5種類

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の支給対象になる対象となる求職者は、常用雇用を希望している者であって、トライアル雇用制度を理解した上で、トライアル雇用による雇入れについても希望しているものであり、さらに次の1から5のいずれかを満たさなければなりません。

  • 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している人
  • 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている人
  • 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業についていない期間が1年を超えている人
  • 紹介日時点で、ニートやフリーターなどで45歳未満の人
  • 紹介日時点で、就職の援助を行うにあたって、特別な配慮を要する人(生活保護受給者、母子家庭の母など、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人など永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者)

これらの条件は、2019年4月より条件が変更になっており、「ニートやフリーターなどで45歳未満の人」という条件が追加され、特別な配慮を要する人に「生活困窮者」が追加されました。

今回の変更で、廃止された条件もあります。「紹介日時点で、学校卒業後3年以内で、卒業後、安定した職業に就いていない人」は、追加された「ニートやフリーターなど」の条件に緩和され、引き継がれましたが、「紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望する人」という条件は、引き継がれることなく廃止されました。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の対象になる事業主の条件は28種類

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の対象になる事業主の条件は、次の28項目です。

  • ハローワーク、地方運輸局又は職業紹介事業者のトライアル雇用求人に係る紹介により、対象者をトライアル雇用(国、地方公共団体、特定独立行政法人、特定地方独立行政法人から受けている補助金、委託費などから支出した人件費により行ったトライアル雇用を除く)した事業主
  • 対象者に係る紹介日前に、当該対象者を雇用することを約していない事業主
  • トライアル雇用を行った事業所の事業主又は取締役の3親等以内の親族(配偶者、3親等以内の血族及び姻族をいう)以外の対象者を雇い入れた事業主
  • トライアル雇用を開始した日の前日から起算して過去3年間に、当該トライアル雇用に係る対象者を雇用したことがない事業主
  • トライアル雇用を開始した日の前日から起算して過去3年間に、当該トライアル雇用に係る対象者に職場適応訓練(短期訓練を除く)を行ったことがない事業主
  • トライアル雇用労働者に係る雇用保険被保険者資格取得の届出を行った事業主
  • トライアル雇用を開始した日の前日から起算して過去3年間に、トライアル雇用を行った事業所において、トライアル雇用を実施した後に常用雇用へ移行しなかったトライアル用労働者(トライアル雇用労働者本人の都合による離職や本人の責めに帰すべき解雇等は除く)の数にトライアル雇用結果報告書兼トライアル雇用助成金支給申請書が提出されていない者の数を加えた数が3人を超え、常用雇用へ移行した数を上回っている事業主以外の事業主
  • 基準期間(トライアル雇用を開始した日の前日から起算して6カ月前の日からトライアル雇用期間を終了する日までの期間をいう)に、トライアル雇用に係る事業所において、雇用保険被保険者を事業主都合で離職させたことがある事業主以外の事業主
  • 基準期間に、トライアル雇用に係る事業所において、特定受給資格者となる離職理由のうち1A又は3Aの理由により離職した者の数を事業所全体の雇用保険被保険者数で除した割合が6%を超えている(当該離職者数が3人以下の場合を除く)事業主以外の事業主
  • 過去1年間において、対象者を雇用していた事業主と資本的・経済的・組織的関連性などから密接な関係にある事業主以外の事業主
  • トライアル雇用労働者に対して、トライアル雇用期間中に支払うべき賃金(時間外手当、休日手当などを含む)を支払った事業主
  • トライアル雇用を行った事業所において、労働基準法に規定する労働者名簿、賃金台帳などを整備・保管している事業主
  • ハローワーク・紹介事業者などの紹介時点と異なる労働条件によりトライアル雇用を行い、トライアル雇用労働者に対し労働条件に関する不利益又は違法行為があった事業主以外の事業主
  • 高年齢者雇用確保措置を講じていないことにより、高年齢者などの雇用の安定などに関する法律第10条第2項に基づき、当該確保措置を講ずべきことの勧告を受けていない事業主
  • 対象者のうち季節労働者に係るトライアル雇用を行った事業主にあっては、指定地域に所在する事業所において、指定業種以外の事業を行う事業主
  • 雇用保険適用事業所の事業主
  • 助成金の支給又は不支給の決定に係る審査に必要な書類などを整備、保管している事業主
  • 助成金の支給又は不支給の決定に係る審査に必要であると管轄労働局長が認める書類などを管轄労働局長の求めに応じ提出又は提示する、管轄労働局の実地調査に協力するなど、審査に協力する事業主
  • 過去5年間において雇用保険二事業の助成金などについて不正受給の処分を受けていない事業主
  • 過去5年間において雇用保険二事業の助成金などについて不正受給に関与した役員などがいない事業主
  • 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度における労働保険料の滞納がない事業主
  • 支給申請日の前日から起算して過去1年間に労働関係法令違反により送検処分を受けていない事業主
  • 風俗営業などを行うことを目的とする事業所の事業主以外の事業主
  • 暴力団に関係する事業主以外の事業主
  • 暴力主義的破壊活動を行った又は行う恐れがある団体などに属している事業主又はその役員がいる事業主
  • 支給申請日又は支給決定日時点で倒産している事業主以外の事業主
  • 国、地方公共団体、特定独立行政法人、特定地方独立行政法人以外の事業主
  • 併給調整の対象となる助成金の支給を受けていない事業主

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の申請手順は5つのステップ

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の申請で注意すべきポイントは、トライアル雇用を開始した後2週間以内にトライアル雇用実施計画書をハローワークに提出する必要があることです。また、支給を申請するタイミングは、トライアル雇用が終了してから2カ月以内になります。なお、トライアル雇用終了後、通常雇用に移行しなかった場合でも、支給申請が可能です。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の流れ

トライアル雇用開始時に提出が必要な書類は3種類

トライアル雇用開始時に提出が必要な書類は次の3種類です。

  • トライアル雇用実施計画書
  • トライアル雇用対象者確認票
  • トライアル雇用助成金支給対象事業主要件票

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、常用雇用に移行するのが前提となっています。トライアル雇用実施計画書では、事前に「トライアル雇用終了時に常用雇用に移行するための要件」を取り決めて、労働者の同意を得ておきましょう。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の支給申請に必要な書類は3種類

トライアル雇用が終了したのち、支給申請に必要な書類は以下の3通です。

  • 支給要件確認申立書
  • トライアル雇用結果報告書兼トライアル雇用助成金支給申請書
  • トライアル雇用期間勤務予定表

まとめ

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は就業が困難な方を一定期間、お試しで雇用することで、助成金が支給されます。採用のミスマッチを防ぐこともでき、事業主と求職者の双方にメリットがある助成金なので、人手不足にお悩みの事業主は、申請を検討してはいかがでしょうか。助成金を申請する際には、入力項目が分かりやすく、迷わず入力できるガイダンス機能を搭載した助成金クラウドの活用をお薦めします。

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