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助成金が不支給になる条件とは? 解雇は不支給にならない?

助成金の受給要件を満たしていても、不支給と判断されることがあります。それは、不支給要件に1つでも当てはまってしまった場合です。それでは、不支給要件とはどのようなものがあるのでしょうか。また解雇や、法律違反が不支給の条件になる助成金も併せて紹介します。

助成金が支給されない、不支給要件は9つ

厚生労働省が支給する助成金は、雇用の促進や労働者のスキルアップを支援するためのものです。そのため、助成金の支給対象としてふさわしくない事業主を定めています。

この不支給要件は、すべての助成金に共通する条件と、助成金ごとに定めている条件があります。まずは、すべての助成金に共通する、9つの不支給要件を紹介します。

不正受給から5年経過していない事業主である

不正受給とは、事実と異なる書類を作成するといった不正を行うことで、助成金の受給条件をクリアして、支給を受けることです。助成金を申請しただけでも、不正受給になります。

2018年度までは、3年が経過すれば申請できましたが、不支給要件が厳しくなり、5年が経過しなければ申請できなくなりました。

また、5年を経過した場合でも、不正受給によって受け取った助成金や延滞金を納付していない事業主は、納付するまで助成金を申請することはできません。

役員の中に、他の事業主のもとで役員として不正受給に関与した者がいる

不正受給を行った事業主は、5年が経過するまで助成金を申請することはできません。他の事業主の不正受給に関与した役員がいる場合も同様です。

また、5年を経過した場合でも、不正受給によって受け取った助成金や延滞金を納付していない事業主は、納付するまで助成金を申請することはできません。

労働保険料を未納している

労働保険とは、雇用保険と労災保険の総称です。雇用保険の財源は事業主が納めている雇用保険料であるため、労働保険が未納の場合、助成金が不支給になります。

ただし、支給申請日時点で未納であっても、2カ月以内に労働保険を納付すれば助成金を受給できるようになります。

労働関係法令に違反している

厚労省は、働きやすい環境を作る目的のために助成金を支給しています。労働関係の法令に違反している場合は、働きやすい環境を作るという目的に反しているため不支給になります。労働関係の法令は以下の5つがあります。

  • 労働基準法
    労働条件に関する最低基準を定めている法律。違反事例は不当解雇や、長時間労働などがあります。
  • 最低賃金法
    賃金の最低額を定める法律。最低賃金を下回る賃金で労働者を雇用した場合は違反となります。
  • 労働安全衛生法
    職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進する法律です。無資格者の重機運転などの危険行為や、過重労働によるストレス過多な職場など労働上の心身の安全が脅かされる場合、違反となります。
  • 労働者災害補償保険法
    業務中や通勤時の労働者の負傷等に対して必要な保険給付を行う法律です。労災保険に加入する義務を怠って加入しなかった場合違反となります。
  • 労働契約法
    紛争の未然防止や労働者の保護のため、労働契約における基本的なルールを定めた法律です。契約の基礎となる法律であるため、罰則や違反事例はありません。

性風俗営業や接待が伴う飲食店の事業主である

性風俗関連営業や接待を伴う飲食等営業は受給できません。ただし、接待業務などに従事しない労働者の雇用に関する助成金については、受給が認められる場合があります。

暴力団に関わりが事業主である

暴力団とは、暴力あるいは暴力的脅迫によって自己の私的な目的を達しようとする反社会的集団のことを指します。暴力団と関りがある事業主は、不支給となります。

暴力主義的破壊活動を行う可能性がある

破壊活動防止法で禁止されている暴力主義的破壊活動を行った事業者は不支給となります。暴力主義的破壊活動とは、国の政策に反対するなど政治的な主義をもって行う暴動、爆発、殺人などの活動です。

倒産している

支給申請日から支給決定日の時点で倒産していた場合、助成金は不支給になります。働く環境の改善などを目的として助成金は支給されますが、倒産してしまった場合は改善するための職場がなくなってしまうため、受給資格が失われます。

不正を行った際に公表することに同意しない

不正を行った事業者は事業主名や役員名が公表されますが、公表することに承諾できない事業主は助成金をもらえません。不正を行うつもりがないなら、公表を拒否する理由がありません。公表を拒むということは、後ろめたいことがある証拠となり助成金は不支給になります。

助成金ごとに定まっている3つの不支給要件とは

上記の雇用関係助成金に共通する不支給要件以外にも、個々の助成金ごとに定まっている不支給要件があります。従業員を解雇した場合、助成金が受給できないとよく言われますが、解雇は共通の不支給要件ではありません。解雇した場合不支給となる助成金を紹介します。また、解雇以外にも助成金ごとの不支給要件がありますので、併せて紹介します。

会社都合による解雇を行っている

解雇に関連する不支給要件が定まっている助成金は、主に雇い入れや研修に関する助成金で、次の助成金が対象です。

  • キャリアアップ助成金(正社員化コース)
  • 人材開発支援助成金(特定訓練コース)
  • 人材開発支援助成金(一般訓練コース)
  • トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
  • 労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)
  • 65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)

これらの助成金は、雇入れ日や正社員への転換日などの前後6カ月に1人でも事業主都合による解雇を行った場合、受給できません。また、解雇ではなく離職であっても、勧奨退職やパワハラ、長時間労働など会社都合による離職の場合では、4人以上かつ労働者の6%以上が離職したら受給資格を失います。

ちなみに、解雇と離職の違いは、退職自由にかかわらず、会社側から通告する場合が解雇、労働者から申し入れる場合が離職です。解雇という名称であっても、従業員に責任がある懲罰としての懲戒解雇の場合は、支給対象から外れることはありません。

高齢者雇用安定法に違反している

高齢者の雇用に関する助成金である65歳超雇用推進助成金の場合、高齢者雇用安定法に違反していると受給できなくなります。具体的には、

  • 第8条60歳以上の定年を定めていること
  • 第9条第1項65歳以上の定年か継続雇用制度を定めていること

という規定のどちらかと異なる定めをしていた場合、不支給になります。

65再雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)は、65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入のいずれかに就業規則を変更した場合受給できる助成金ですが、この助成金の不支給要件にも、高年齢者雇用安定法に違反していた場合不支給になると書かれています。

育児・介護休業法等に違反している

両立支援等助成金は、育児や介護などの家庭と仕事の両立を目的にした助成金です。支給申請日や雇入れ日を基準に過去1年間から、支給決定日の間に育児や介護にかかわる法律に違反している場合、両立支援等助成金を受給できなくなります。違反があると受給できなくなる法律は、以下の法律です。

  • 育児・介護休業法
    仕事と育児や介護を両立しやすい環境整備のため、休業などの制度を定めた法律です。たとえば、育児休暇を取得しようとする社員に対するパワハラや、育児休暇取得後に意に沿わない配置換えなどが行われた場合、違反となります。
  • 次世代育成支援対策推進法
    子供たちが健やかに生まれ育成される環境を整備するために、国、地方公共団体、企業、国民が担う責務を定めた法律です。 たとえば、100名以上を雇用する企業は、労働者の仕事と子育てに関する計画を策定し労働局に届け出る義務があると定められています。この計画を提出していない場合は、助成金は受給できません。
  • 男女雇用機会均等法
    職場における男女の均等取扱いを規定した法律です。たとえば採用や昇進において性別を理由に差別することは禁止されています。違反した場合は、助成金の受給資格を失います。
  • パートタイム労働法
    パートタイム労働者の雇用管理や待遇の改善を定めた法律です。たとえば、「厚生労働大臣はパートタイム労働者の雇用管理の改善を図るために必要な場合、事業主に報告を求めることができる」と規定されていますが、虚偽の報告をした場合は違反となります。
  • 女性活躍推進法
    女性の職業生活の推進に関する基本方針を定めた法律です。300名以上の労働者を雇用する企業は女性の活躍状況の把握や課題分析、行動計画の策定、情報公開などを行う義務があります。この義務を怠った場合には助成金が受給できません。

まとめ

ひとつでも当てはまった場合、助成金が受給できない不支給要件を紹介しました。不支給要件に当てはまっているのを知りながら申請を行えば、不正申請とみなされるかもしれません。

助成金を申請する際には、要件を満たしているかだけではなく、不支給要件に当てはまっていないかもきちんと確認してから申請しましょう。不安な場合には、助成金の専門家である、社会保険労務士に相談してみるのはいかがでしょうか。

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