人手不足を解消するために、定年の年齢を引き上げてベテラン社員に活躍してもらったり、経験豊富な高齢者を採用しようと考えている事業主もいるのではないでしょうか。今回は、高齢者が活躍できる制度や環境づくり、採用に活用できる助成金を紹介します。
目次
高齢者の雇用や継続雇用で得られる3つのメリットがある
少子高齢化が進む日本において、労働力の確保は深刻な課題です。この課題を解決する1つの方法として、政府は、豊富な経験や知識を有する高齢者が、年齢にかかわりなく働くことができる社会の実現を目指しています。また、高齢者の雇用や継続雇用に取り組む事業主には、助成金を支給しています。
高齢者の雇用や継続雇用は、助成金が受給できるだけでなく、次のような3つのメリットがあります。
- いきいきと働く高齢者が職場にいることで、若手社員も長く働けるという将来像が描けるようになり、職場が活性化し、定着率の向上に繋がる
- 豊富な経験や知識を持つ高齢者が、講師としてスキルやノウハウを若手に教えることで、社内全体の人材育成に繋がる
- 高齢者が働きやすい職場環境を整えることで、高齢者以外も働きやすい職場になる
雇用の継続に活用できるおすすめの助成金
現在働いている高齢者の雇用継続に活用できる助成金は、定年の制度を廃止したり、定年の年齢を引き上げるだけではなく、雇用環境の改善にかかる経費も、支給対象となります。
定年の引き上げなどで受給できる助成金
65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)
65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)は,定年の廃止、定年年齢の引き上げ、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用のいずれかを実施した事業主に支給される助成金です。
支給額は定年の引き上げ幅や、60歳以上の雇用保険被保険者数によって変わります。定年を廃止し、60歳以上の被保険者数が10人以上の場合、最大160万円が支給されます。
高年齢者の雇用管理の制度化で受給できる助成金
65歳超雇用推進助成金(高年齢者雇用環境整備支援コース)
65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)は、高齢者向けの雇用管理制度を整備する事業主に支給される助成金です。若年労働者と同じ評価制度や勤務形態では、高齢者の能力が十分に発揮できないかもしれません。高齢者向けの評価制度や人事処遇制度、希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度など、高齢者が意欲と能力を発揮できる環境づくりが大切です。
支給金額は中小企業主か否か、生産性要件を満たしたか否かで変わります。生産性要件を満たした中小企業の場合、雇用管理制度の導入や見直しのための専門家やコンサルタントの経費の75%が助成されます。
高年齢者の無期雇用で受給できる助成金
65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)
65歳超雇用推進助成金(高齢者無期雇用転換コース)は、50歳以上かつ定年年齢未満の有期雇用の労働者を無期雇用に転換させた事業主に支給される助成金です。50歳以上の労働者を無期雇用に転換することで、若手社員にとっても長く働けるビジョンが描けるメリットがあります。
支給金額は中小企業か否か、生産性要件を満たしたか否かで変わります。中小企業であって生産性要件を満たした場合60万円が支払われます。
高齢者を新たに採用する取り組みに活用できるおすすめ助成金
継続雇用の取り組みだけでなく、新たに高齢者を採用する取り組みにも支給される助成金があります。ベテランの経験やノウハウを活用したい事業主にとっては、助成金を受給できて、ベテラン社員も採用できる、一挙両得の取り組みです。
65歳以上の方を雇用した場合に受給できる
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)は、65歳以上の離職者を1年以上継続して雇用した事業主に支給される助成金です。支給の対象となる労働者は、ハローワークや民間の職業紹介所などの紹介によって雇入れた方になります。
支給額は中小企業か中小企業以外か、週所定労働時間が30時間以上か、20時間以上30時間未満かによって変わります。中小企業であって、週所定労働時間が30時間以上の場合、半年ごとに35万円ずつ、1年で合計70万円が支給されます。
なお、生涯現役コースでは60歳以上65歳未満の方は対象外となりますが、65歳未満の場合は特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)が適用できます。
60歳以上、65歳未満の方を雇用した場合に受給できる
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、高齢者のほか、障害者などの就職困難者をハローワークの紹介により、継続して雇用する事業主に支給される助成金です。支給対象となる方の年齢は60歳以上、65歳未満です。また、支給要件として、対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、雇用期間が継続して2年以上である必要があります。
支給額は中小企業か中小企業以外か、週所定労働時間が30時間以上か、20時間以上30時間未満かによって変わります。中小企業であって、週所定労働時間が30時間以上の場合、半年ごとに30万円ずつ、1年で合計60万円が支給されます。
中高齢者が高齢者を採用した場合に受給できる
中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)
中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)は、40歳以上の中高年の起業を支援する助成金です。事業運営のために必要となる従業員として、中高齢者を雇い入れた場合、募集や採用、訓練の実施にかかる費用の一部を助成します。
支給要件として、労働者の年齢が60歳以上の方を1名以上、40歳以上から60歳未満の方を2名以上または40歳未満の方を3名以上を雇い入れる必要があります。支給率は、起業者の年齢によって異なります。起業者が60歳以上の場合、雇用にかかった費用の3分の2が支給されます。支給額の上限は200万円です。
中高齢者の中途採用を拡大した場合に受給できる
中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)
中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)は、45歳以上の方の雇用管理制度を整備し、中途採用を拡大した事業主に支給される助成金です。また、一定期間後に生産性が向上した場合は、支給される助成金が増額されます。
支給額は、中途採用を拡大した場合に50万円、45歳以上の方を初採用した場合に60万円が支給されます。なお、支給申請日において継続して雇用されている支給対象者の中に、雇入れ時の年齢が60歳以上であって、雇入れ日から6カ月以上経過している方がいる場合は、70万円が支給されます。
まとめ
若者の採用が難しくなる中、高齢者の採用は人手不足を補うだけでなく、働きやすい職場づくりや人材育成の効果も期待できる、一石三鳥の取り組みといえます。高齢者の採用や雇用継続を支援する助成金を活用しながら、会社の成長にも生かしてみてはいかがでしょうか。
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