助成金や補助金は、表記が似ていることから、同じ目的で支給される公的資金だと認識している方も多いのではないでしょうか。そこで、助成金と補助金の共通点や違いを解説し、代表的な助成金や補助金も併せて紹介します。
目次
助成金と補助金の主な共通点は4つ
まずは、助成金と補助金の共通点から紹介します。助成金と補助金は、どちらも公的資金であることのほかに、主な共通点が4つあります。
公的資金だから返済不要
返済が必要な融資と違い、助成金や補助金は、返済が不要です。金融機関などが利息を得るために貸し出す融資とは異なり、国や地方自治体が、政策に合った事業に取り組む会社を支援するための公的資金だからです。
支給されるタイミングは原則的に後払い
助成金と補助金はともに支給のタイミングは後払いです。要件を満たすために経費がかかる場合でも、いったん会社の資金から支払い、支給を待たなければいけません。支給されるタイミングは数カ月から数年かかる場合もあるため、資金繰りに活用できないことを認識しておきましょう。
支給された交付金の使い道は自由
助成金も補助金も、取り組みにかかった費用を助成したり、補助するために支給されるものです。受給条件をクリアし、受給申請をした後に入金された交付金は、雑収入として計上され、自由に使うことができます。運転資金はもちろん、設備投資、借入金の返済など、会社によって使い方はそれぞれです。
不正受給で詐欺罪に問われる場合も
助成金や補助金は公的資金です。そのため、不正受給のペナルティは非常に重く、受給した助成金や補助金を返済するだけでなく、金利やペナルティとして受給した金額以上の金額を請求されます。悪質な場合は事業者名がWebサイトで公表されるほか、詐欺罪で訴えられることもあります。また、不正受給に関わった会社や人は、その後5年間は、他の助成金や補助金を受給することができません。
故意に申請書類を捏造・改ざんするのはもちろん、故意ではなくても書類に誤りがあった場合、不正とみなされることがあります。また、支給要件を満たしていないのに申請を促す悪質な業者もいます。助成金に興味がある場合は誤った申請をしないよう、社会保険労務士などの専門家に相談するのも手です。
「助成金の不正受給が発覚する理由とは? 4つのペナルティも紹介」を詳しく見る
助成金と補助金の主な違いは5つ
助成金と補助金は共通点はありますが、一方で5つの相違点があります。
管轄が違う
助成金と補助金は、国や地方自治体から支給されますが、主だった助成金は厚生労働省から、主だった補助金は経済産業省から支給されます。そのため、申請する窓口も助成金は厚労省管轄の窓口、補助金は経産省管轄の窓口になります。
支給の目的が違う
助成金は、正規雇用の拡大や労働者のスキルアップなど、雇用に関連した取り組みを支援するために支給されます。一方の補助金は、ものづくりやサービス向上など、産業の活性化に関連した取り組みを支援するために支給されます。助成金は「ヒト」のため、補助金は「コト」のために支給されています。
審査が違う
助成金も補助金も、それぞれ受給条件を満たしているかどうか審査はありますが、助成金は受給条件をクリアしていれば、原則として受給することができます。一方の補助金は公募のため、受給条件をクリアしていても、支給に値する事業計画かどうか、審査をクリアしなければ支給されません。
支給額の算出方法が違う
助成金は要件に合わせて、一律に金額が決まっているものがほとんどです。例えば、労働者1人当たりいくらといった具合です。そのため、要件を達成するための経費の申請は不要です。対して、補助金は事業にかかった経費を報告し、その資金に対して決まった割合の額が支給されます。上限額はありますが、かかる費用は事業によってさまざまであるため、金額は一律ではありません。
募集時期や締め切りが違う
助成金は、年度の初めに内容が公開され、基本的には予算が尽きるまで募集を受け付けています。対して、補助金は2月から5月に申請が締め切られるため、短期間で申請の準備をしなければなりません。
代表的な助成金と補助金を紹介
助成金は厚労省が雇用の促進や働き方改革を政策目標として支給しているもので、ここではキャリアアップ助成金と両立支援等助成金を紹介します。なお、助成金は同じ名前の助成金でもコースにより要件が異なるものがあります。
また、補助金は経済産業省が産業の活性化や生産性向上のために支給するもので、ここではものづくり補助金とIT導入補助金を紹介します。
非正規雇用から正規雇用への転換で受給できる助成金
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
キャリアアップ助成金はその名の通り、企業内でのキャリアアップを促進するため正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業者に対して厚生労働省が助成する制度です。その中でも、正社員化コースは、主な受給要件として有期雇用の労働者などを正規雇用の労働者などに転換または直接雇用した場合になります。
例えば、労働者を有期雇用から正規雇用に転換した場合、1人当たり57万円の助成金を受給することができます。
「キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給額は最大1440万円! 受給要件や申請手順を紹介」を詳しく見る
男性が育児休業を取りやすい環境づくりで受給できる助成金
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)
両立支援等助成金は、仕事と家庭の両立支援に取り組んだ事業者を助成する制度です。出生時両立支援コースでは、主な受給要件として男性が育児休業を取得しやすい職場環境づくりに取り組み、育児休業を取得した場合になります。
男性社員がはじめて育児休業を取得した場合は57万円、2人目以降は取得した日数に応じて支給額が決まります。
「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)は、男性の育休取得の推進で助成金を支給」を詳しく見る
革新的なサービスの開発や試作品の開発で受給できる補助金
ものづくり補助金
ものづくり補助金は略称で、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。また、もの補助金と略される場合もあります。
ものづくり補助金は、経済産業省直下の中小企業庁が支給するもので、革新的なサービス開発や試作品開発を促進するため、新製品開発のための製造機器購入やシステム構築などを支援するものです。補助率は最大3分の2で、支給額の上限は1000万円です。
なお、似たような名称で「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」という補助金もありますが、こちらはものづくり補助金とは呼びません。
ITツールの導入で受給できる補助金
IT導入補助金
IT導入補助金は、経済産業省が発行する補助金で、日々のルーティン業務を効率化させるITツールなど、汎用的なITツールの導入に活用できる補助金です。補助率は2分の1で、上限は450万円です。
独自の特徴として、ITツール導入支援事業者がITツールの導入や補助金の申請を支援してくれるため、ITに詳しい人がいない中小企業でも、補助金を利用してIT化を図ることができます。
まとめ
助成金と補助金の共通点や相違点を踏まえた上で、目的に合った助成金や補助金を探してみてはいかがでしょうか。正社員を増やしたい、社員のスキルアップを図りたいとお考えの方は、雇用関連の公的資金が受給できる助成金の活用をご検討ください。
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