助成金ノウハウ情報

助成金が増える生産性要件とは? 利用の条件や受給額が増える助成金を紹介

助成金には、一定の条件を満たした場合、支給される金額が増額・増率される生産性要件という仕組みがあります。生産性要件を利用できる条件や、対象となる助成金に加え、設立から3年未満の会社が利用できない理由も紹介します。

生産性要件は、生産性を向上させたご褒美

生産性要件とは、厚生労働省が支給する助成金をもらう際、一定条件を満たすと助成金が増額・増率される仕組みです。少子高齢化で労働力人口の減少が見込まれる中、経済成長のためには一人一人の労働生産性を高めることが必要だと厚労省は考えています。

生産性を向上させる民間の事業所の取り組みを支援するため、厚労省は生産性を向上させた事業所に対しては助成金を多く支給しています。

生産性要件に当てはまる要件は2つ

生産性要件を満たすためには、2つの条件を満たす必要があります。1つ目の条件は、事業主都合による解雇や退職勧奨による離職が過去3年度に渡って行われていないことです。事業主都合による解雇なので、解雇といっても労働者に対する懲罰としての懲戒解雇は含まれません。

逆に社員から申し出た離職であっても、会社から離職するよう働きかけた場合や、パワハラやセクハラ、過度な残業などが理由の退職は会社都合による退職であるとみなされ生産性要件を満たせないので注意しましょう。

2つ目の条件は、3年度前に比べて生産性が一定以上伸びていることです。3年度前との比較なので、毎年伸びている必要はありません。生産性要件を満たすためには、3年度前と比べる必要があるため、雇用保険適用事業主となってから3年未満の事業所は、生産性要件による増額・増率の条件は満たせません。なお、雇用保険適用事業主となってから3年未満の事業所であっても、助成金の申請はできます。

生産性が一定以上伸びているかどうかは、6%を基準に判断されています。6%を超えた場合は、無条件で要件を満たしたと考えられます。1%を超えたけれども6%に生産性が届かない場合は、金融機関から一定の事業性評価を得ていることを条件に生産性要件を満たしたとみなされます。

事業性評価の参考にされる項目は、市場での成長性、競争優位性、事業特性及び経営資源・強みなどで、これらの項目の情報を提供するのは与信取引のある金融機関や、借入限度額が設定されている金融機関です。金融機関からの借り入れの必要がない場合でも、借入限度額を設定しておくようにしましょう。

生産性の向上には、給与や減却償却費の増額も含まれる

生産性は付加価値を雇用保険被保険者数で割った数字です。付加価値とは、以下の項目を足したものです。

  • 営業利益
  • 人件費
  • 減価償却費
  • 動産・不動産賃借料
  • 租税公課

営業利益が増えるのはもちろんですが、給与が増額されたり、機械や建物に投資をして減価償却費が増えた場合なども付加価値が高まったとみなされます。

雇用保険被保険者数は、会計年度の末日時点でカウントされます。雇用形態にかかわらず、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある労働者は、原則全員が雇用保険の被保険者となります。

付加価値を雇用保険被保険者数で割るため、生産性=労働者1人当たりの付加価値、と言い換えられます。

生産性要件の計算に専用シートがある

厚生労働省が生産性を計算できる生産性要件算定シートを提供しています。

生産性要件算定シートを見る

生産性要件算定シートを使うには、該当する勘定科目の額を損益計算書や総勘定元帳の各項目からの転記が必要です。

助成金の専門家は社会保険労務士ですが、損益計算書や総勘定元帳の専門家は税理士や公認会計士なので、社労士だけではなく税理士や公認会計士にも相談してみましょう。

「助成金は誰に相談すれば良い? 8士業の違い、違法業者の見分け方や専門家の選び方を徹底解説」を詳しく見る

生産性要件で増額される6つの助成金

では、生産性要件を満たした場合増額される助成金にはどのようなものがあるのでしょうか。助成金ごとに増える金額や助成率は違うので、1つずつ確認しましょう。

正社員化や待遇改善で受給できる助成金
キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者を正社員化したり待遇改善をしたりした場合に支給される助成金です。例えば、キャリアアップ助成金(正社員化コース)では、有期雇用労働者を正規雇用に転換した場合、中小企業は57万円支給されますが、生産性要件を満たした場合72万円に増額されます。

「キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給額は最大1440万円! 受給条件や申請手順を紹介」を詳しく見る

職場の定着率の向上で受給できる助成金
人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金は職場定着率向上のため、魅力ある職場づくりの取り組みに支給されます。人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)では、メンター制度などの雇用管理制度を導入・実施し離職率が低下した場合、57万円が支給されますが、生産性要件を満たした場合72万円に増額されます。

「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)は5つの制度から取り組みを選べる」を詳しく見る

高年齢者の雇用維持・促進で受給できる助成金
65歳超雇用推進助成金

65歳超雇用推進助成金は、高年齢者が年齢にかかわりなく働ける職場づくりの取り組みに対して支給されます。65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)では、雇用管理制度の整備に係る経費を助成してもらえますが、通常中小企業は60%の助成率ですが、生産性要件を満たした場合は75%に増率されます。

家庭と仕事の両立ができる環境整備で受給できる助成金
両立支援等助成金

両立支援等助成金は、家庭と仕事の両立を支援する助成金です。たとえば、両立支援等助成金(出生時両立支援コース)は男性が育児休業を取得しやすい職場づくりに取り組み、さらに育児休業を取得した場合に助成されます。1人目の育児休業取得時、中小企業は57万円が支給されますが、生産性要件を満たした場合72万円に増額されます。

「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)は、男性の育休取得の推進で助成金を支給」を詳しく見る

離職率の低減で受給できる助成金
人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、Off-JTなどの研修を行う場合に経費や賃金を助成する制度です。たとえば一般訓練コースでは、賃金助成が1人1時間あたり通常380円ですが、生産性要件を満たす場合は480円に増額されます。

「人材開発支援助成金(特定訓練コース)の支給額は最大1000万円」を詳しく見る

他にも生産性要件で支給額が増える助成金がある

生産性要件を満たした場合増額・増率される助成金は他にもあります。

  • 労働支援助成金
  • 中途採用等支援助成金
  • 地域雇用開発助成金

まとめ

助成金をもらうだけではなく、生産性要件の達成を目標にすることで、社員の生産性が上がり、企業の収益向上にもつながります。生産性も向上して、もらえる助成金も増えるという一石二鳥の制度なので、助成金を検討している方はぜひ生産性要件を満たすことも視野にいれてみてください。

ネット上で簡単に
申請書作成・承認依頼