助成金ノウハウ情報

複数の助成金を受給できる併給とは? 同時に受給できない併給調整も解説

助成金の中には、組み合わせによって複数の助成金を受給することができます。この仕組みを併給と呼びます。一方で、受給の条件をクリアしているのに、併給が制限される仕組みとして、併給調整があります。今回は併給調整の仕組みや、併給ができる助成金の組み合わせを解説します。

複数の助成金を受給する併給とは

併給とは、複数の助成金を受給することができる仕組みです。助成金を賢く活用している会社の多くは、助成金の併給を受けています。

本来、助成金の原則として、支給の対象が同じものは、同時に受給することはできません。この仕組みを併給調整と呼びます。ただし、助成金の組み合わせによっては、支給の対象が同じであっても、併給が可能なケースがあります。

助成金の併給が可能な3つのケース

複数の助成金を受給する、併給が可能なケースは、組み合わせる助成金それぞれの受給条件をクリアするケースと、1つの受給条件をクリアするケース、特定の助成金の支給を受けていることで、受給条件をクリアするケースの3つがありまする。

助成金の受給条件が異なる組み合わせ
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)とキャリアアップ助成金(正社員化コース)

併給を受ける助成金の組み合わせで多いのが、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)とキャリアアップ助成金(正社員化コース)の組み合わせです。この組み合わせは、それぞれの受給条件が異なるケースです。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、ハローワークなどから紹介された労働者を一定期間雇用した場合に、助成金が支給されます。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、無期雇用や正規雇用の促進を支援する助成金です。この助成金は、有期雇用から無期雇用や正規雇用、無期雇用から正規雇用に労働者を転換した事業主に、助成金が支給します。

ハローワークから紹介された労働者を一定期間のトライアル雇用を行った後、有期雇用で採用し、6カ月後に無期雇用や正規雇用へ転換した場合は、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)とキャリアアップ助成金(正社員化コース)の併給を受けることができます。

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助成金の受給条件が同一の組み合わせ
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)と人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)

1つの受給条件をクリアすることで、2つの助成金を受給できる組み合わせが、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)と人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)の組み合わせです。

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)は、有期雇用の労働者の基本給の賃金規定などを増額するように改定し、昇給した事業者に、助成金が支給されます。

人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)は、離職率を低下させるために、定期昇給以外の賃金制度を設けて賃金アップなどに取り組む事業者に、助成金が支給されます。

助成金の受給条件は、どちらも基本給の引き上げで、賃金を2%以上アップすることで受給することができます。キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)が対象とする労働者は、有期雇用の労働者です。有期雇用の労働者の賃金アップによって、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)、人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)それぞれを受給することができます。

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特定の助成金を受給していることが、受給条件となっている組み合わせ
東京都正規雇用転換促進助成金や人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)

助成金の受給条件の中には、特定の助成金の支給を受けていることで、受給条件をクリアし、併給が受けられる組み合わせがあります。

人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)は、働き方改革に取り組む上で、人材を確保することが必要な中小企業に支給されます。この助成金は、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コース、職場意識改善コース)の支給を受けた中小企業が受給できます。

また、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、パートや契約社員、派遣労働者といった非正規から正規雇用に転換した労働者が安心して働き続けられるよう、労働環境を整備する事業者に支給されます。この助成金は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給を受けた、東京労働局の管内に事業所を置く中小企業が受給できます。

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併給調整の対象になるケースは2種類ある

助成金の原則として、支給の対象が同じ助成金は、同時に受給できません。これを併給調整といいます。同じ支給対象で併給調整の対象になるケースは、2種類あります。

同一の研修や教育訓練では併給調整の対象になる
人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース)と建設事業主等に対する助成金

人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース)は、有期雇用の労働者などの人材育成にかかった経費や、賃金を支援する助成金です。

建設事業主等に対する助成金は、かつては建設労働者確保育成助成金と呼ばれたもので、建設事業主等に対する助成金(若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース、建設労働者認定訓練コース、建設労働者技能実習コース)は、建設労働者の雇用の改善や建設労働者のスキルアップに取り組む事業主や団体に支給される助成金です。

助成金の受給条件は、どれも人材育成のための研修や教育訓練ですが、同一の研修や教育訓練を実施して、複数の助成金を受給する、併給はできません。

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同一の設備やシステムでは併給調整の対象になる
65歳超雇用推進助成金(高年齢者雇用環境整備支援コース)、人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)、障害者作業施設設置等助成金

65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)は、2019年4月1日に高年齢者雇用環境整備支援コースから、名称が変更になった助成金です。この助成金は、高年齢者の雇用管理制度の整備などを実施した事業者に、助成金が支給されます。

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)は、介護に関わる労働者が働きやすい環境にするため、介護福祉機器の導入に取り組む事業主に、助成金が支給されます。

障害者作業施設設置等助成金は、障害者を雇用するために、作業が簡単に行える設備を導入する事業主に、助成金が支給されます。

助成金の受給条件は、どの助成金もシステムや設備の導入ですが、同一の設備やシステムを導入して、複数の助成金を受給することはできません。

まとめ

複数の助成金を併給できるケースを紹介しましたが、助成金によっては併給調整を受ける場合があります。併給調整の条件は複雑です。併給をお考えの方は、自信で判断せず、専門家である社会保険労務士に確認することをお勧めします。

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