助成金は社会情勢に合わせて、厚生労働省が新たに追加するものがあれば、廃止するものもあります。また、内容が改正される場合もあるので、2020年度で廃止や大幅な改正のあった助成金を紹介します。
目次
賃金規定等の増額に対する加算措置を創設した
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)は、中小企業が賃金規定を改定した場合に支給される助成金です。これまではは賃金規定等の増額の対象が3%まででしたが、新たに5%の枠が設けられました。賃金規定等を5%以上増額した場合、さらに1人当たり9,500円が加算されます。
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保険加入と働き方の見直しに対する加算措置を創設した
キャリアアップ助成金(選択的適用拡大導入時処遇改善コース)
キャリアアップ助成金(選択的適用拡大導入時処遇改善コース)では、中小企業を対象に、2つの加算措置が新設されました。ひとつは、労使合意に基づく任意適用に向けて、保険加入と働き方の見直しを進めるための取組を行った場合の助成措置です。外部専門家を活用した被用者保険の加入メリット等の説明・相談、保険加入や働き方(就業時間等)の意向調査などを行った中小企業には、19万円が支給されます。
もうひとつは、短時間労働者の生産性の向上を図るための取り組み(研修制度や評価の仕組みの導入)を行った場合の加算措置で、中小企業に10万円が支給されます。また、被用者保険加入とともに基本給の増額を行う場合の助成メニューについては、複数回支給を可能とし、2%以上の増額も対象となりました。
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助成対象の期間が延長された
キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長コース)
キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長コース)では、2020年度末までの期間限定で、延長する労働時間が1時間以上5時間未満で、労働者の手取り賃金が減少しない取り組みを行った場合も助成対象となりました。この場合の支給額の上乗せは22万5000円、支給申請の上限人数は45人です。
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新たに小学校などが臨時休業となった保護者の有給取得を支援する
新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金
新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金は、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、小学校などが臨時休業した場合に、その小学校などに通う子の保護者である労働者の、休職に伴う所得の減少に対応するため、新たに創設された助成金です。正規雇用や非正規雇用を問わず、有給の休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた企業に対して叙せ金が支給されます。
個別支援加算が新設された
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)は、男性の育児休業を取得しやすい職場風土づくりの取組に加えて、対象男性労働者に対し、育児休業取得前に個別面談など育児休業の取得を後押しする取組を行った場合に、個別支援加算が支給されるようになりました。
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新型コロナウイルス感染症対応特例が創設された
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)の新型コロナウイルス感染症対応特例は、新型コロナウイルス感染症への対応として、新たに創設された助成金です。
この助成金は、介護のために最低20日間取得できる有給の休暇制度を設け、仕事と介護の両立支援制度の内容を含めて社内に周知し、介護のための休暇を合計5日以上労働者に取得させた中小企業事業主の支援を目的としています。このほか、以下の2項目について、条件が緩和されました。
- 介護休業の取得日数の要件が合計12日以上から合計5日以上に緩和
- 介護両立支援制度も利用日数の要件が合計42日以上から合計20日以上に緩和
なお、介護両立支援制度の導入要件が廃止になりました。
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子供の看護休暇制度の条件が緩和された
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)では、職場復帰後支援において、育児・介護休業法の規定内容を上回る子の看護休暇制度について、取得時間の要件が、20時間以上から10時間以上に緩和されました。
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2つあったコースが1つのコースに統合された
両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)
両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)は、加速化Aコースと加速化Nコースの2つのコースが統合され、支給される金額が、数値目標達成時に47.5万円、生産性要件を満たした場合60万円となりました。
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新型コロナ対応の特例措置を創設した
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造の変化などが原因で、事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行った事業主を支援する助成金です。現在は、新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るため、労使間の協定に基づき、雇用調整(休業)を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成しています。
特例措置により助成率および上限額の引き上げを行っており、1人1日15,000円を上限額として、労働者に支払う休業手当などのうち、最大10分の10が助成されます。
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支給条件や支給額の算定方法が変更になった
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)は、これまであった時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)から名称が変更され、支給条件も以下のように変更されました。
- 全ての対象事業場において、月60時間を超える36協定の時間外労働時間数を縮減させること
- 時間外労働時間数で月60時間以下に設定
- 時間外労働時間数で月60時間を超え月80時間以下に設定
- 全ての対象事業場において、所定休日を1日から4日以上増加させること
- 交付要綱で規定する特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇)の何れか1つ以上を全ての対象事業場に新たに導入すること
- 時間単位の年次有給休暇制度を全ての対象事業場に新たに導入させること
なお、上記の成果目標に加えて、指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上又は、5%以上で賃金引上げを行うことを成果目標に加えることができます。また、支給額は従来の成果目標を達成時に加え、賃金引き上げの達成時の加算額によって決まるようになりました。
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給対象となる事業主の条件や支給額の算定方法が変更になった
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバール導入コース)
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバール導入コース)は、これまであった時間外労働等改善助成金(勤務間インターバール導入コース)から名称が変更され、支給対象となる事業主の条件も以下のように変更されました。
- 労働者災害補償保険の適用事業主
- 次の表にある中小企業の事業主
- 全ての対象事業場について、原則として36協定を締結している
- 全ての対象事業場について、原則として年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している
- 次のいずれかに該当する事業場を有している
- 勤務間インターバルを導入していない事業場
- 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
- 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
また、支給額は従来の成果目標を達成時に加え、賃金引き上げの達成時の加算額によって決まるようになりました。
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支給対象がコロナ対応の特別休暇取得へ変更になった
働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)
働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)は、時間外労働等改善助成金(職場意識改善特例コース)から名称が変更された助成金です。もともとは、改正労働基準法の対応に取り組む事業主を支援するものでしたが、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中、特例コースとして名称を変更し、特別休暇制度を新たに整備の上、特別休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業を支援する助成金になりました。
支給額は、特別休暇を就業規則に規定することに向けて、支給対象となる取り組みにかかった費用の4分の3です。なお、助成金の上限は50万円です。
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助成金の上限額が倍増になった
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)は、時間外労働等改善助成金(テレワークコース)から名称が変更され、支給される助成金の上限額も倍増されました。その結果、1人当たりの上限額は40万円、1企業当たりの上限額が300万円となりました。
テレワークの対象者も拡大され、正規雇用の労働者だけでなく、受け入れている派遣労働者も含まれます。また、成果目標の見直しも行われ、月間平均所定外労働時間数を前年と比較して5時間以上削減させる目標が廃止されました。
「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)はテレワークの経費を最大300万円まで支給」を詳しく見る
名称が変更になった、働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)と65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)は、時間外労働等改善助成金(団体推進コース)から、65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)は、高年齢者評価制度等雇用管理改善コースから名称が変更になった助成金です。助成金の内容に変更はありません。
「働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)は労働条件の改善に事業主団が取り組むことで支給される助成金」を詳しく見る
まとめ
厚生労働省が所管する助成金は、2020年度に変更があります。これまで助成金を活用した会社の方も、追加されたり、改廃された助成金を改めて確認したうえで、申請の準備に臨んでください。
そもそも、どの助成金を活用していいのか分からない、変更点がよく分からないという方は、助成金のプロである社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。
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