理美容業で人手が不足する原因は、美容師や理容師のなり手が減少していることもありますが、髙い離職率も挙げられます。理容室や美容室の離職率を改善するためのに活用できる助成金だけでなく、人材を確保するために活用できる助成金も紹介します。
目次
理美容業界の離職率が高い理由
理美容業は、深刻な人手不足に陥っています。文部科学省がまとめた学校基本調査によると、2019年5月時点での理容学校在校生は1199人で前年比109人減、美容学校在校生は3万4290人で同124人減と、理美容業ともになり手が減り続けています。
卒業生全員が国家資格を取得するわけではないので、実際のなり手は、さらに少ないことが想定されます。理美容業の人手不足に追い打ちをかけているのが、離職率の高さです。美容室に就職した美容師の約4割が、3年以内に辞めています。就職から10年後には、1割程度しか残っていないとも言われています。こうした背景には、2つの理由が挙げられます。
離職率が高い理由1
技術の習得の壁にぶつかる
理容師や美容師の離職率が高い理由のひとつは、カットなどの技術の習得の壁にぶつかることです。理容師や美容師として下積みを終え、スタイリストとして働くようになっても、すぐにスキルが身につくものではありません。
終業後に、カットの技術を磨くことになりますが、スタッフの人数が充分ではない店舗などは、時間を確保することが難しいでしょう。カットの技術が伸び悩み、指名客が獲得できない状況が続くと、スタッフはモチベーションが維持できず、離職につながる可能性が高まります。
離職率が高い理由2
出産後の復職が難しい
理容師や美容師の離職率が高いもう1つの理由は、出産後の復職が難しいことです。子育てをしながら働くためには、子供を安心して預けられる保育施設が必要ですが、預け先が確保できなかった場合は、離職につながりやすくなります。子供の預け先が見つかったとしても、ブランクが壁となり復職のハードルが高いのが現状です。
理容師や美容師の研修で受給できる助成金
理美容業で研修や訓練に活用できる、おすすめの助成金を2つ紹介します。理容師や美容師の定着率を向上させるために、スキルアップが課題だと感じている方は、ぜひ活用してください。
特定の訓練を行うことで受給できる助成金
人材開発支援助成金(特定訓練コース)
人材開発支援助成金(特定訓練コース)は、労働生産性の向上に資する訓練、若年者に対する訓練、OJTとOff-JT組み合わせた訓練など、効果が高い訓練の経費や、賃金を厚生労働省が支給する助成金です。助成金の対象となる訓練は、以下になります。
- 労働生産性向上訓練
- 若年人材育成訓練
- 熟練技能育成・承継訓練
- グローバル人材育成訓練
- 特定分野認定実習併用職業訓練
- 認定実習併用職業訓練
- 中高年齢者雇用型訓練
助成金の金額は、1事業所当たり最大1000万円です。なお、助成金の金額はOff-JTとOJTで異なります。Off-JTの場合はさらに賃金助成、経費助成で異なります。
人材開発支援助成金(特定訓練コース)は、理美容業で広く活用されている助成金で、特に35歳未満の理容師や美容師の研修や訓練に活用できる若年人材育成訓練が選ばれています。
特定訓練コース以外の訓練を行うことで受給できる助成金
人材開発支援助成金(一般訓練コース)
人材開発支援助成金(一般訓練コース) は、特定訓練コース以外のOff-JTの訓練を事業主もしくは事業主団体等が実施する場合に、助成金が支給されます。助成金の金額は、1事業所当たり最大500万円です。なお、助成金の金額は、Off-JTの賃金助成と経費助成で異なります。
人材開発支援助成金(一般訓練コース)の支給対象は、Off-JTに限定されているため、理容師や美容師のスキルアップのために開催されるカットセミナーなどが候補として挙げられます。
「人材開発支援助成金(特定訓練コース)の支給額は最大1000万円」を詳しく見る
理美容業で、出産後の復職に活用できる助成金
出産後の復職を支援する助成金の活用に取り組んでいる理美容室は、スタッフの離職を防げるだけでなく、採用でもほかの美容師と差別化を図ることができます。出産後の復職に活用できるおすすめの助成金を3つ紹介します。
育児休業後に職場復帰しやすい環境づくりで受給できる助成金
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)は、働き続けながら子の養育を行う労働者の雇用の継続を図るため、育児休業の円滑な取得及び職場復帰に資する取り組みを行った中小企業事業主に、厚生労働省が支給します。
助成金の金額は、1人当たり最大47万5000円です。なお、助成金の金額は、育休取得時、職場復帰時、職場支援加算(職場復帰時に加算して支給)、代表要員確保時、有期契約労働者の場合の加算、職場復帰後支援によって異なります。
「両立支援等助成金(育児休業等支援コース)は職場復帰支援でも支給される助成金」を詳しく見る
男性が育児休業を取りやすい環境づくりで受給できる助成金
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)
職場結婚をしている労働者であれば、男性が育児休業を取得していることで、出産後の助成の復職をサポートすることができます。男性の育児休業を支援する助成金が、両立支援等助成金(出生時両立支援コース)です。
この助成金は、男性労働者が育児休業を取得しやすい職場風土作りに取り組み、男性労働者にその養育する子の出生後8週間以内に開始する育児休業を利用させた事業主及び育児目的休暇を導入し男性労働者に利用させた事業主に、厚生労働省が支給します。
助成金の金額は1事業所当たり最大228万5000円です。なお、助成金の金額は、中小企業か中小企業以外かで異なります。また、育児目的休暇の導入・利用や、育休取得が1人目から2人目以降かでも異なります。
「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)は、男性の育休取得の推進で助成金を支給」を詳しく見る
再就職の希望者を採用することで受給できる助成金
両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)
両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)は、妊娠、出産、育児、介護又は配偶者の転勤を理由として退職した者が就業できるようになったときに復職する際、従来の勤務経験、能力が適切に評価され、配置・処遇がされる再雇用制度を導入し、再雇用を希望する旨の申出をしていた者を採用した事業主に、厚生労働省が支給します。
助成金の金額は、1人当たり最大38万円です。なお、助成金の金額は、中小企業か中小企業以外かで異なります。また、再雇用が1人目か2人目かによっても異なります。
「両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)で助成金と即戦力、働きやすい環境を獲得」を詳しく見る
離職率を下げる制度や計画づくりに活用できる助成金
人手不足に悩む理美容業界において、離職率を下げる取り組みは急務です。離職率を下げる制度や計画づくりに活用できるおすすめの助成金を3つ紹介します。
離職率を下げる取り組みで受給できる助成金
人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)は、離職率を下げる取り組みを支援する助成金です。この助成金は、雇用管理制度整備計画を作成し、制度を導入、実施したことで、離職率の低下目標を達成した事業主に、厚生労働省が支給します。
助成金の金額は、57万円です。支給対象の取り組みは5つあり、このうち理美容業界で取り入れることができる制度は、次の4つです。
- 評価・処遇制度
- 研修制度
- 健康づくり制度
- メンター制度
「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)は5つの制度から取り組みを選べる」を詳しく見る
人事評価制度の整備で受給できる助成金
人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)
人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)は、離職率を低下させるために、人事評価制度の整備を支援する助成金です。この助成金は、定期昇給以外の賃金制度を設けて、生産性の向上、賃金アップ、離職率の低下に取り組む事業主に、厚生労働省が支給します。
助成金の金額は、人事評価制度を定めた場合に50万円、離職率の低下目標を達成した場合に80万円が支給されます。
「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)は人事評価の整備で最大130万円支給」を詳しく見る
働き方改革に取り組む中小企業が受給できる助成金
人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)
2019年に新設された人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)は、働き方改革に取り組む上で、人材を確保することが必要な中小企業を支援する助成金です。この助成金は、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コース、職場意識改善コース)の支給を受けた中小企業が受給できます。
助成金は計画を達成したときと、目標を達成したときの2回受給することができ、助成金の金額は最大で75万円です。
人手不足を解消する雇用や採用に活用できる助成金
有期雇用の労働者を正規雇用に転換したり、お試し雇用で適性を判断したりと、雇用の促進で人手不足を解消する事業主をサポートする助成金もあります。
非正規雇用から正規雇用への切り替えで受給できる助成金
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、正規雇用の促進を支援する助成金です。この助成金は、就業規則または労働協約などの制度を整え、正規雇用労働者を増やした事業主に支給されます。助成金の金額は、中小企業か中小企業以外かで異なります。
また、有期雇用労働者を正規雇用した場合と無期雇用した場合、無期雇用労働者を正規雇用した場合によって異なり、最大で20人分、1440万円を受給することができます。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)を受給できた事業者の中で、東京労働局の管内に事業所を置く中小企業であれば、さらに東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の受給を上乗せとして申請することができます。
正規雇用への切り替えで東京都から受給できる助成金
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、パートや契約社員、派遣労働者といった非正規から正規雇用に転換した労働者が安心して働き続けられるよう、労働環境を整備する事業者を支援する助成金です。
この助成金は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)を支給され、東京労働局の管内に事業所を置く中小企業に、東京都が支給します。実質的にキャリアアップ助成金の上乗せとなる助成金です。
助成金の金額は、キャリアアップ助成金(正社員コース)の支給対象となった人数によって、支給額は増えます。支給額は対象となる労働者1人につき、20万円です。
「キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給額は最大1440万円!受給要件や申請手順を紹介」を詳しく見る
一定期間のお試し雇用で受給できる助成金
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、職業経験が無かったり、技能、知識などに課題があり、安定して働くことが困難な方の採用を支援する助成金です。この助成金は、ハローワークや職業紹介事業者などの紹介により、現在定職に就いてなかったり安定して働くことが困難な方を一定期間、試行雇用した事業者に、厚生労働省が支給します。
助成金の金額は、採用1人当たり月額4~5万円が支給されます。採用した方が母子家庭の母、または父子家庭の父の場合は、1人当たり月額5万円が支給されます。
「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の支給対象は500事業所まで」を詳しく見る
まとめ
理美容業において、労働力の減少は避けられません。今後は、これまで以上に採用に力を注がなければ、人手を確保することは難しくなるでしょう。そのような事態に陥る前に、今から手を打つ必要があります。
これまで紹介した助成金は、採用や雇用だけでなく、スキルアップのための研修や、出産からの復職がしやすい環境を整えることに活用できるだけではなく、魅力的な職場作りに活かすことができるので、まだ受給に取り組んでいない方は、すぐに取り組むだけの価値はあります。
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