助成金ノウハウ情報

小売業に活用できる助成金【2020年最新版】人手不足と長時間労働の改善に

小売業の事業主は働き方改革に取り組んでいるものの、労働力不足は解消されていません。小売業が課題を解決するための取り組みは、雇用や採用に力を入れることはもちろん、長時間労働や待遇の改善など、多岐に渡ります。今回は、そうした取り組みに活用できる、小売業にとっておすすめの助成金を紹介します。

目次

小売業が解決すべき2つの課題

小売業が解決すべき2つの課題があります。1つは労働力が不足していること、もう1つは長時間労働が蔓延していることです。

労働力の不足は、小売業の中でも営業、流通、商品生産で顕著に

厚生労働省の雇用動向調査によると、小売業が人手不足である状況が明らかになりました。求人をしているのに、雇用できなかった労働者の人数(未充足求人数)を常用労働者数を割ることで、欠員率を求めることができます。

この欠員率が高い数値であるほど、人手が足りていない状況を示していることになります。小売業の中でも、特に営業や販売、流通や運搬、商品生産において労働力が不足していることが、日本政策金融公庫の食品産業動向調査で分かります。

長時間労働が蔓延し、飲食料品小売業の月間労働時間は184時間

小売業のもう1つの課題は、長時間労働によって、労働者が疲弊していることです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、小売業の月間勤務時間が長く、特に飲食料品小売業は184時間にも上ります。

離職率が上がれば、新たな労働力を確保しなければならないため、採用コストも比例して上がり、経営を圧迫しかねません。アルバイトやパート、契約社員の比率が特に高い小売業では、待遇改善を通じて魅力ある職場環境を整えるだけでなく、正社員化を進めることで、他社との差別化を図ることができ、優秀なアルバイトやパート、契約社員の定着率を上げる効果が期待できます。

労働力不足を解消する雇用や採用の取り組みに活用できるおすすめの助成金

有期雇用の労働者を正規雇用に転換したり、お試し雇用で適性を判断したりと、雇用や採用の促進で、慢性的な労働力不足の解消に活用できるおすすめの助成金を紹介します。

非正規雇用から正規雇用への切り替えで受給できる助成金
キャリアアップ助成金(正社員化コース)

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、正規雇用の促進を支援する助成金です。この助成金は、就業規則または労働協約などの制度を整え、正規雇用労働者を増やした事業主に支給されます。

助成金の金額は、中小企業か中小企業以外かで異なります。また、有期雇用労働者を正規雇用した場合と無期雇用した場合、無期雇用労働者を正規雇用した場合によって異なり、最大で20人分、1440万円を受給することができます。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)を受給できた事業者の中で、東京労働局の管内に事業所を置く中小企業であれば、さらに東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の受給を上乗せとして申請することができます。

「キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給額は最大1440万円!受給要件や申請手順を紹介」を詳しく見る

正規雇用への切り替えで東京都から受給できる助成金
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金

東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、パートや契約社員、派遣労働者といった非正規から正規雇用に転換した労働者が安心して働き続けられるよう、労働環境を整備する事業者を支援する助成金です。この助成金は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)を支給され、東京労働局の管内に事業所を置く中小企業に、東京都が支給します。

つまりキャリアアップ助成金の支給が決まったら、忘れずに申請した方が良い助成金になります。助成金の金額は、キャリアアップ助成金(正社員コース)の支給対象となった人数によって、支給額は増えます。支給額は対象となる労働者1人につき、20万円です。

「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の支給対象は500事業所まで」を詳しく見る

一定期間のお試し雇用で受給できる助成金
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、職業経験が無かったり、技能、知識などに課題があり、安定して働くことが困難な方の採用を支援する助成金です。この助成金は、ハローワークや職業紹介事業者などの紹介により、現在定職に就いてなかったり安定して働くことが困難な方を一定期間、試行雇用した事業者に、厚生労働省が支給します。

助成金の金額は、採用1人当たり月額4~5万円が支給されます。採用した方が母子家庭の母、または父子家庭の父の場合は、1人当たり月額5万円が支給されます。

「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、採用のミスマッチを防いで助成金も受給できる一石二鳥の助成金」を詳しく見る

長時間労働の改善に活用できるおすすめの助成金

小売業の中には、深夜や早朝の勤務が欠かせない業態もあり、長時間勤務が常態化しているケースも見られます。労働時間を削減する、休息時間を確保する、有給を取得しやする取り組みによって、長時間労働を改善することで受給できるおすすめの助成金を紹介します。

労働時間の削減で受給できる助成金
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)は、長時間労働の見直しのため、働く時間の縮減に取り組む中小企業事業主に、厚生労働省が支給します。助成金の金額は、最大200万円です。

助成金の金額は、目標設定した時間外労働の時間や休日の日数、助成金の対象にな経費の額によって異なります。この助成金の受給ができると、人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)を上乗せとして申請することができます。

「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)は労働環境の改善と採用のアピールにもつながる助成金」を詳しく見る

休息時間の確保で受給できる助成金
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバール導入コース)

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバール導入コース)は、健康保持や過重労働防止の取り組みを支援する助成金です。この助成金は、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設け、働く方の生活時間や睡眠時間を確保する事業主に、厚生労働省が支給します。助成金の金額は、最大100万円です。

助成金の金額は、休息時間数や新規の取り組みかどうかで異なります。この助成金の受給ができると、人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)を上乗せとして申請することができます。

「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバール導入コース)は、休息時間の確保で支給される助成金」を詳しく見る

コロナ対策の特別休暇の取得促進で受給できる助成金
働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)

働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)は、もともとは、改正労働基準法の対応に取り組む事業主を支援するものでした。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中、特例コースとして名称を変更し、特別休暇制度を新たに整備の上、特別休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業を支援する助成金になりました。

働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)の支給額は、特別休暇を就業規則に規定することに向けて、支給対象となる取り組みにかかった費用の4分の3です。なお、助成金の上限は50万円です。

「働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)はコロナ対策の経費を最大50万円助成」を詳しく見る

働き方改革に取り組む中小企業が受給できる助成金
人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)

2019年に新設された人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)は、働き方改革に取り組む上で、人材を確保することが必要な中小企業を支援する助成金です。この助成金は、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コース、職場意識改善コース)の支給を受けた中小企業が受給できます。助成金は計画を達成したときと、目標を達成したときの2回受給することができ、助成金の金額は最大で75万円です。

パート・アルバイトの待遇改善に活用できるおすすめの助成金

小売業では、正社員だけでなく、アルバイトやパートの労働力も不足しています。そこで、アルバイトやパートにとって魅力ある職場をつくる待遇改善の取り組みで受給できるおすすめの助成金を紹介します。

パート・アルバイトの基本給アップで受給できる
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)は、有期契約労働者等の基本給の賃金規定などを増額するように改定し、昇給した事業主に、厚生労働省が支給します。助成金の金額は、1事業所当たり最大360万円です。

助成金の金額は、中小企業か中小企業以外かで異なります。また、対象になる労働者の人数によっても異なります。

「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)は賃金アップで受給可能に。3つの増額方法を紹介」を詳しく見る

パート・アルバイトの職務に合わせた給料に変更で受給できる
キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)

キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)は、有期契約労働者等に関して正規雇用労働者と共通の職務などに応じた賃金規定などを新たに作成し、適用した事業主に、厚生労働省が支給します。

助成金の金額は、中小企業か中小企業以外かで異なります。中小企業の場合は1事業所当たり57万円、中小企業以外の場合は42万7500円となっています。

「キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)は賃金テーブルの改善で受給」を詳しく見る

パート・アルバイトへの諸手当支給で受給できる
キャリアアップ助成金(諸手当制度共通化コース)

キャリアアップ助成金(諸手当制度共通化コース)は、有期契約労働者等に関して正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設け、適用した事業主に、厚生労働省が支給します。助成金の金額は、中小企業か中小企業以外かで異なります。中小企業の場合は1事業所当たり38万円、中小企業以外の場合は28万5000円となっています。

「キャリアアップ助成金(諸手当制度共通化コース)は最大112万円が受給できる」を詳しく見る

パート・アルバイトを被保険者にすることで受給できる
キャリアアップ助成金(選択的適用拡大導入時処遇改善コース)

キャリアアップ助成金(選択的適用拡大導入時処遇改善コース)は、労使合意に基づく社会保険の適用拡大の措置により、有期契約労働者等を新たに被保険者とし、基本給を増額した事業主に、厚生労働省が支給します。

助成金の金額は、1事業所当たり最大276万円です。なお、助成金の金額は、中小企業か中小企業以外かで異なります。また、基本給の増額割合に応じても異なります。

「キャリアアップ助成金(選択的適用拡大導入時処遇改善コース)は社会保険の導入を助成」を詳しく見る

女性が働きやすい職場環境づくりに活用できる助成金

労働力が不足する小売業では、女性の労働者の離職を防ぎ、活躍できる環境を整えることも重要です。育児休業を取りやすく、復職しやすい、育児をしながらでも働きやすい職場づくりに取り組むことで受給できる、おすすめの助成金を紹介します。

育児休業後に職場復帰しやすい環境づくりで受給できる助成金
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)

両立支援等助成金(育児休業等支援コース)は、働き続けながら子の養育を行う労働者の雇用の継続を図るため、育児休業の円滑な取得及び職場復帰に資する取り組みを行った中小企業事業主に、厚生労働省が支給します。助成金の金額は、1人当たり最大47万5000円です。

助成金の金額は、育休取得時、職場復帰時、職場支援加算(職場復帰時に加算して支給)、代表要員確保時、有期契約労働者の場合の加算、職場復帰後支援によって異なります。

「両立支援等助成金(育児休業等支援コース)は職場復帰支援でも支給される助成金」を詳しく見る

再就職の希望者を採用することで受給できる助成金
両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)

両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)は、妊娠、出産、育児、介護又は配偶者の転勤を理由として退職した者が就業できるようになったときに復職する際、従来の勤務経験、能力が適切に評価され、配置・処遇がされる再雇用制度を導入し、再雇用を希望する旨の申出をしていた者を採用した事業主に、厚生労働省が支給します。助成金の金額は、1人当たり最大38万円です。

助成金の金額は、中小企業か中小企業以外かで異なります。また、再雇用が1人目か2人目かによっても異なります。

「両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)で助成金と即戦力、働きやすい環境を獲得」を詳しく見る

職場以外で働ける環境づくりの取り組みで受給できる助成金
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)

働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)は、時間外労働の制限や長時間労働の改善、ワーク・ライフバランスのため、在宅やサテライトオフィスで働くテレワークに取り組む中小企業の事業主に、厚生労働省が支給します。助成金の金額は、最大300万円です。

助成金の金額は、テレワークに関する目標が達成できたかどうかで異なります。目標を達成できた場合は、かかった経費の4分の3、達成できなかった場合は、2分の1となります。テレワークを導入することで、事務作業を担当する女性社員が、育児をしながらでも在宅で働く環境を整えられ、離職の防止にもつながります。

「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)はテレワークの経費を最大300万円まで支給」を詳しく見る

まとめ

小売業において、働き方改革を進めないことには、労働力が減る一方です。採用や雇用を成功させるには、長時間労働を改善し、労働者にとって魅力ある職場環境を整える必要があります。今こそ、助成金を活用して、働き方改革に取り組んでみてはいかがでしょうか。

ネット上で簡単に
申請書作成・承認依頼